■編集部より指令

女性は、付き合う前から子どもが欲しいなんていう話をすると、相手にドン引きされたり、結婚後に話し合っても「この仕事をやり遂げてから」などとはぐらかされたりします。どうにかこの男女の温度差を縮める手立てはないものでしょうか。

■佐藤留美さんの回答

なぜ男は、子どもを先送りにしたがるのか -結婚と子ども・女の言い分
http://president.jp/articles/-/11422

■大宮冬洋さんの回答

佐藤留美さんに感化されて……

突然ですけど、連載7回目にして文体を変えさせてもらいます。この仕事が始まったとき、「プレジデント社の媒体で初めての連載だ。しかも相方は先輩ライターのサトルミ(佐藤留美さんの愛称)さん!」と大いに緊張して、「僕」などの主語を消して客観性を高めるように努力してきました。言い方を変えると、客観性という名の外野に逃げたのですね。

でも、もう限界です。

僕は男女関係についての取材が好きで、今までに多くの男女に恋愛や結婚について話を聞いてきました。しかし、統計データにはあまり興味がないし、自分が取材した内容すらもその場で楽しく聞いて書いたらほとんど忘れてしまいます。客観性など持ちようがないのです。

サトルミさんの文章が妙に熱いのも気になります。今回の記事(http://president.jp/articles/-/11422)を見てください。自分がワーキングマザー取材の最前線に立っているにも関わらず、安易にワーキングマザー側には回らずに<「子どもが欲しい」動機が僻み根性や負けず嫌いから発生している>可能性を示唆しています。佐藤留美、危険な女性ですね。僕はシビれました。

加えて、前回の僕の記事「夫に家事をさせるための魔法のひと言」(http://president.jp/articles/-/11183)への読者ツイートです。けっこうボロクソに書かれていましたね。

あの文章で僕が言いたかったことは、「僕も含めた男性は顔を立ててほしい人が多い。女性はそれを大事にしてあげながら利用しよう」に尽きます。仕事と家庭の両立に悩む読者のために僕なりに方策を考えて、かなり婉曲的に丁寧に書いたつもりです。それでも「わがままボクちゃん男」と一刀両断されるのなら、もっとはっきりと主張して同じように批判されるほうが清々しますよ。

編集部からは、「女性読者を想定して男性目線で書いてください」と命じられています。あのう、もっと具体的に想定していいですか。

「大宮とは幼馴染で仲はいい。でも、性的にはお互いにまったく興味がない山田花子(仮名、37歳、未婚彼氏なし)と議論する」つもりで書きます。ただし、山田(彼女も僕を「大宮」と呼び捨てにするからいいのです)への愛情というか友情は持ち続けるつもりです。

男性や既婚女性の読者はどうするのかって? そんなことは知りません。今後は独断と思いつきで勝手なことを書きますので、何とでも異論・反論を寄せてください。

簡単には子どもをつくれないのが普通

前置きが長くなりました。付き合う前から「子どもが欲しい」なんていう女は、男からドン引きされて当然ですよ。結婚してからも同じです。子作りを前提に危険日(ラッキーデイとも言う)に狙い撃ちを真面目に求められたら、男は「妻だけED」になってしまうでしょう。

子どもを作るシーン、すなわちセックスを思い出してください。基本的には男が攻める側で女が受ける側ですよね。ベッドの上では法の下の平等なんて関係ありませんよ。性的には、男は「素敵な受け身の女」に反応するものなのです。

もちろん、男にも責任感というか理性はあります。だからコンドームをつけて、責任の負えない状況では子どもを作らないように気をつけるのです。企業と雇用の寿命が短くなっている現在では、よほど生活力に自信があったり環境(親の支援など)が整っていない限り、簡単には子どもを作れないと思うほうが普通ではないでしょうか。

決断を導く言葉

そんな理性を吹き飛ばす言葉があります。

「私は特に子ども好きじゃないけれど、あなたの子どもなら作ってもいいな。とってもかわいいと思うから」です。

というか、子どもがほしいと願う前提には、この気持ちがあって当然ですよね。優秀な子どもが産めるのであれば父親は誰でもいい、なんていう女性が少数派であることを信じます。

「この仕事をやり遂げてから」と子作りを先伸ばしする男に対してはどうすべきか。こんな殺伐としたやりとりをする前に、「あなたはすごくいい仕事をしていると思う。尊敬している。今後、もっと成功するよ」と伝えましょう。信頼している賢くてかわいい妻から何度もそんなことを言ってもらえたら、男の自信は急上昇ですよ。

仕事への活力がわいてくると同時に、今夜のベッドでも雄々しくなりそうです。「ゴムはもう必要ない。できたらできたでいいじゃないか。何とかするよ」という男らしい一言が飛び出るかもしれません。

会社のアホ男とか幼馴染のダメ男も褒めて持ち上げろ、なんて言っているわけではありません。そいつらにはビシビシと直言してやりましょう。でも、恋人や夫だけは別です。人間と人間であると同時に、男と女であることを忘れないでください。男が子作りと子育てを決意するには、大きな自信と安心、そして心優しくて女性的な妻が必要なのです。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/