英語は「習うより慣れろ」だ。「声に出して、話すことから始めよう」というのは、同時通訳者で、NHKラジオ講座『入門ビジネス英語』の講師も務める関谷英里子さん。関谷さんに、途中で挫折しない英語学習法を聞いた。

ポイント1
インプットとアウトプットを繰り返す

関谷英里子●せきや・えりこ
日本通訳サービスを主宰。アル・ゴア元副大統領やノーベル平和賞受賞ダライ・ラマ14世など世界の著名人の通訳を務めてきた、カリスマ同時通訳者。NHKラジオ講座『入門ビジネス英語』の人気講師でもある。著書に『えいごのつぼ』(中経出版)、『同時通訳者の頭の中』(祥伝社)など。

英語学習は「聞く、読む、話す、書く」をバランスよくといわれる。けれども 「今日は『聞く』勉強、明日は『読む』勉強というふうに切り離してやるのはよくない」と関谷さん。この四技能を分けてとらえる感覚が、英語学習にくじける要因のひとつと指摘する。

「英語はコミュニケーションツール。人に何かを伝えたいから学ぶのですよね。ですから『表現すること』が前提です。そして、英語の学習はインプットとアウトプットの繰り返し。それに尽きるといっていいでしょう」

インプットは「聞く」「読む」、アウトプットは「話す」「書く」。例えば、テキストを読むときは音読する。音声で聞いたときは、それをまねて声に出してみる。

「あるいは、書き写してみるのもいいでしょう。『聞く』『読む』のインプットをしたら、すぐにアウトプットする。それが大切です」

英語を覚えるという感覚から脱しよう。「話してなんぼ」が、くじけない英語学習への第一歩だ。

ポイント2
価値を生み出さない勉強に意味はない

自分が「誰に」「何を」伝えたいのか。英語を学ぶにあたっては、それが動機づけとしてとても大切になる。伝えたいことがあれば、そのための何を学べばよいかが見えてくる。

「英語に限りませんが社会人の場合、価値を生み出さない勉強は意味がないと思います。ふだん英語を使う機会がなく、そんなに好きでもなく、皆がやっているから何となくやらなければという程度では、まず続きません」

会社に利益をもたらす、あるいは自分のキャリアをアップさせるなど、英語を身につけることにより「なりたい自分の姿」を、より具体的に思い描くことが、学習への意欲を高める。そこで重要なのが学習の入り口だ。

「仕事の実務にかかわる英語から入るのが、より現実的で学びやすい」と関谷さん。「金融関係の仕事をしている方なら、株や景気の動向について書かれた英字新聞や経済誌の記事を読む。例えばそういうことです」

自分の業種については、すでに蓄えた知識、情報をもっているから、同じ業種にかかわる英語ならば入りやすい。同業の海外企業情報などをネットで検索。無料の教材となるサイトは無数にある。

ポイント3
すき間勉強としっかり勉強の二本立て

英語を学習する時間を、どう工面するかも大切なポイント。「すき間勉強としっかり勉強」の二本立てを関谷さんはすすめる。すき間勉強は、例えば通勤途中、ジョギングや犬の散歩などの時間を活用した「ながら学習」。しっかり勉強は、まとまった時間をとる学習。英会話教室で学習する時間やその予習復習、あるいは朝、1時間早起きしてTOEICの問題集を解くというのもよい。

「通勤時間のすきま勉強でも、やはりアウトプットが大切です。私がよくやっていたのは、通勤電車でホームの階段から一番遠い車両に乗り、改札まで歩く間、車中で読んだ教材の英語を、声に出して繰り返すことでした」

10分、15分でいい。毎日、英語に触れることが大切だ。関谷さんが講師を務めるNHKラジオ講座『入門ビジネス英語』が1回15分。これを録音して通勤時間に活用するのもおすすめだ。