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図1 年収/図2 生涯賃金

3人に1人――。派遣社員や契約社員、パート・アルバイトなど非正規の雇用者の割合は1990年代から増加を始め、現在35%台にまで達している。

5000万人余りの全雇用者のうち、3000万人余りが正社員、残り2000万人弱が非正規で、正社員が減り非正規が増える構図は今後も変わりそうもない。肝いりのアベノミクスでも、その傾向に歯止めをかけるのは簡単ではない。

その正社員と非正規社員という雇用形態の違いによって、「一生に貰えるお金」にどれほどの差が出るのだろうか。

まずは年収だ。厚生労働省「賃金事情等総合調査」をもとに世代ごとの月収と賞与を合算し、正社員と非正規の年収(男性)を算出した(図1)。

「20代は両者にそれほど収入の差はないですが、30代以降、その差が急拡大します。30代以降、非正規の収入の伸びが鈍化するのがその理由です。契約社員の場合、正社員と仕事量が変わらないことが多いので、その収入差に雇用形態の重要性を思い知ることになります」

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図3 福利厚生/図4 実際、みんないくらもらっているか?

とは社会保険労務士でFPの井戸美枝氏である。全世代の平均年収は正社員510万円、非正規290万円だが、40代でその格差は2倍以上にも広がる。

そして勤続38年間として単純計算した生涯賃金は非正規が約1億円なのに対し、正社員は1億9000万円となった。別のデータ(図2)では大卒正社員のそれは平均2億5000万円、社員1000人以上の企業なら3億円弱と、非正規の最大3倍となることがわかった。

給料以外にも、格差をより大きくする要因がある。それは、福利厚生費だ。

案外よく知られていないが、正社員に対して企業は福利厚生費を月平均10万円以上も払っている(図4/日本経団連調査)。8万円近くにもなる健康保険や厚生年金保険など社会保険の会社負担分の「法定福利費」に加え、社宅・寮の費用や賃貸住宅の家賃補助などの住宅関連の費用や、医療・健康関連(健康診断など)財産形成(財形貯蓄制度や社内預金制度)、保険・生活用品の割引販売といった各社ごとの「法定外福利費」が計2万5000円を超える。これがやはり勤続38年間で総計約4700万円にもなる計算だ。