少し前、インターネットで1本の投稿ビデオが話題を呼んだ。撥水(はっすい)性のスポーツシューズをはいた若者たちが、湖のほとりから全力でダッシュし、ほんの数歩とはいえ、忍者のように水の上を走っていたのだ。

水をはじく靴をはいてダッシュすれば、本当に水の上を走れるのか。体を張った実験が売りのディスカバリーチャンネルの人気番組「怪しい伝説」が、このテーマに挑戦した。

番組のホスト役を務めるハリウッドの特撮スペシャリスト、アダムとジェイミーが、若者たちと同様にウエットスーツと撥水性の靴で武装し、池のほとりに立つ。まずジェイミーが巨体を揺らして助走し、水面に1歩踏み出すと……ドボン! 即座に盛大な水しぶきを上げて沈んでしまった。その姿に大笑いしたアダムも、同じ結果に。

スピードをつけて助走すれば、飛び石のように水の上を走れるか。100m走のタイムが10秒を切る、五輪代表の陸上選手で実験したが……。

そこで2人は、強力な助っ人を呼ぶことにした。ロンドン五輪男子短距離走のアメリカ代表、ウォーレス・スピアモン選手だ。「目標は3歩。でも水上では自信ないな」。クラウチングの姿勢からスタートし、次元の違う加速力を見せて、猛然と水面へ。どうか?

ドボン。やはり1歩も水の上を走れず、ただ水にダイブしただけだった。

スピードでだめなら、靴を工夫してはどうか。中南米に生息するトカゲの一種「バシリスク」は、水面を器用に駆けることで知られている。ハーバード大学の研究によると、このトカゲは後ろ足を水面にほぼ垂直にたたきつけ、体重の1.13倍の反発力を発生させることで、沈まずにいられるらしい。

反発力を高めるため、アダムとジェイミーは水をたたく面積を広くした改良靴を制作。俊敏で体重の軽い女性曲芸師にはいてもらって実験すると、むしろ改良前より早く沈む結果に。人間の筋力では、どうやら十分な反発力を得るのは無理そうだ。

こうなったら、本業の特撮テクニックで勝負だ。アダムとジェイミーは鉄パイプやベニヤ板で即席の桟橋を組み立て、岸辺から池の中央に向けて、水面の数センチ下に設置。撮影する角度を工夫すれば、カメラには映らない。

助走から一気に秘密の桟橋に乗ると、そのまま数歩水面を駆け抜け、桟橋がなくなったあたりでドボン! 冒頭のビデオも、たぶんこの方法で撮影されたのだろう。これまでのうっぷんを晴らすように、アダムとジェイミーは何度も、水の上を走ってはドボン、を繰り返した。