「男は痴漢をするもの」という誤った認識

私は33年前、親の意向で私立中学を受験させられ中高一貫の女子校にブチ込まれました。それまで身近にいた男子が生活から消滅したのです。

私は小学校の頃、女子たちと遊ぶ楽しさとは別で、男子たちの会話の面白さに魅了されていたので、彼氏が欲しいとか恋愛したいとかではなく、教室に男子がいない環境にMAXで不足感を感じていました。とにかく女子校というのは、男子との“普通の”接点が一切ない場所なのです。

一方、登下校中には痴漢被害に遭います。痴漢をしてくるのは100%男性。

小学6年生まで男子達と同じ立場で生活していたのに、中1からは、大人や年上のワケの分からない男たちから、触られたり股間を押しつけられたり、嫌がらせを受けるというのだけが唯一の接点になったわけです。

学校の先生などの大人に「なんで痴漢がいるのか」と尋ねても「そんなの俺が分かるわけないだろう」「春だから変態が出てくる」「変なやつがいるんだから気をつけろ」「自分たちがスカートを短くするのが悪い」「男はいつでもやりたい生き物」と答えにならない回答しか得られませんでした。

そういった環境で育った私や周りのクラスメートが、男性に対して「女に生理がくるように、男も全員、年頃になったら痴漢をするものなんだ」という間違った認識を持ったのはある程度仕方ないことだったと思います。

女子校にいる私のような、意欲的に「異性がいる環境」を求める者は高校生になると、男子校の文化祭などに出向いてボーイハントに繰り出します(たまに「異性との関係にうつつを抜かさないように異性がいない学校に通わせる」という保護者がいますが、うつつを抜かす子はうつつを抜ける環境をつくるために時間と労力を惜しまず努力します)。

そこで出会う男子は「女子の前での俺」を意識した緊張とカッコつけを併せ持った男子なので、私の求める「単なるクラスメートというナチュラルな状態の男子との生活」は結局体験できずに中高が終了しました。

その後、男性を同じ人間として見る、接するという基本的なことができるようになるまでに長い時間を要しました。

痴漢に遭わなくなり「痴漢」が視界から消えた

30歳を過ぎてから、渋谷駅の壁に「痴漢は犯罪」というポスターを見た時、ハッとしました。

自分が中高生の頃、電車に3度乗れば1度は痴漢に遭っていてそれをハッキリ覚えているのに、「今も痴漢犯罪の被害に遭っている子どもがいる」という意識が全然なくなっていたことに気付いたのです。

街でも道でも電車でも本屋でも制服を着ていない時でも、至る所で遭っていた痴漢被害が、高校を卒業すると23歳頃からほぼなくなりました。遭わなくなったというだけで世の中から痴漢がいなくなったような気がしていた自分に驚きました。

写真=iStock.com/TheNewGuy03
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