教育熱心なお父さんたちの誤解

近年、育児に参画する男性が増えているのはとても喜ばしいことです。母親の負担が減ること、子供が父母双方と密なコミュニケーションをとれることなど、その効用は計り知れません。

しかし一方で、育児に積極的な「意識高め」の男性にはときどき、子育てを誤解している方がいます。

子育てを、「学習」「教育」とイコールだと思っているのです。

たとえば、先ほどお話しした「習い事のハシゴ」も、お母さんではなく、お父さんの方針で行っているケースをよく目にします。

「お受験」に熱心なお父さんも増えています。母親は「子供はのびのび育てればいい」と思いつつも、夫の熱量に押されてしぶしぶ従う、という構図もよく目にします。

教育熱心なお父さんたちは、子供が小さいうちから「知的なこと」に触れさせなくてはならない、と思いがちです。

1970年代の「早期教育ブーム」以来、日本では教育の開始を過剰に早く始めたがる親が、どの世代にも一定数います。「最初の5年で才能が決まる」といったフレーズにかされ、子供を勉強やスポーツなどに駆り立てるのです。

そこにはしばしば、親が、自分が叶えられなかった夢を子供に託す「リベンジ」の心理が働いています。自分より良い大学に行かせるためにせっせと塾に通わせたり、自分が習いたくてもできなかったピアノをやらせたり。

ちなみに、高学歴な親でも「リベンジ」に走ることは珍しくありません。

机の上にうつ伏せる子供を励ます両親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

一流商社で働いているお父さんのリベンジ

一流大学を出て一流商社で働いているお父さんが、「自分は、本当は医者になりたかったのになれなかった」「だから子供はぜひ医学部に入れたい」と、毎日会社から帰った後、子供の横に張り付いて猛勉強させていた例もあります。

これが、子供を無視した子育てであることは明らかです。子供に自分の希望を叶えてもらおうとするのは、子供に依存し、かつ子供を支配することです。

この手の「早すぎる教育」をいられた子供は、幼児期~学童期ごろまではおおむね成績優秀で従順ですが、その後かなりの高確率で、うまくいかなくなります。思春期を迎えるころ、成績の伸び悩みや人間関係トラブルに見舞われ、引きこもりや非行に走ることが多いのです。親に対しても、通常の反抗期のレベルを超えた、「断絶」に近いほどの拒否反応を示す子もいます。

「教育」は、そのようなリスクをおかしてまで行うべきことでしょうか?

「いい教育を受けさせるのが『子育て』だ」という誤解から、一人でも多くの親御さんが抜け出すことを願うばかりです。