両陛下と日赤を訪問

昨年の出来事を振り返ると、5月15日、天皇・皇后両陛下と敬宮殿下は、日赤の清家篤社長と鈴木俊彦副社長を御所に招かれ、全国赤十字大会およびこれまで1年間の活動状況について、説明を聴いておられた。

さらに同年10月2日には両陛下と敬宮殿下がおそろいで、わざわざ港区の日赤本社にまでお出ましになっている。その時は、殉職した救護員の慰霊碑に白いユリの花束を手向けられ、関東大震災100年を記念した企画展「温故備震おんこびしんふるきをたずね明日に備える」をご覧になっておられた。

敬宮殿下のお気持ちは早くから定まっておられた可能性がある。

「国民の中に入っていく皇室」

上皇陛下から天皇陛下が受け継いでおられる「象徴天皇」像の発展的な継承という観点からも、今回のご選択によって、人々により近い場所で、具体的に国民に寄り添われるご経験を持たれることは、とても望ましいことではないだろうか。

天皇陛下がまだ浩宮ひろのみや殿下と呼ばれていた頃に、次のようにおっしゃっていた。

「(目指すべきは)国民とともに歩む皇室、国民の中に入っていく皇室だと思います。そのためにはいろんな機会をとらえて、1人でも多くの人と接していくことが大切だと思います」(昭和61年[1986年]7月23日)

この度の敬宮殿下のご選択は、天皇陛下のこのようなお考えを深く受け継がれるものと言える。

「嘱託勤務」の意味

日赤での勤務が「嘱託」という形になっているのは、もちろん皇族としてのご公務を重視されているからにほかならない。

敬宮殿下の皇族としてのお心構えについては、先の記者会見でご自身のお考えを明確に示しておられた。

「一つ一つのお務めを大切にしながら、少しでも両陛下や他の皇族方のお力になれますよう、私のできる限り、精一杯務めさせていただきたいと考えております」

「皇室は、国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にしながら務めを果たす、ということが基本であり、最も大切にすべき精神であると、私は認識しております」

皇族としてのご公務の一方で、他ならぬ日本赤十字社に嘱託として勤務されるという敬宮殿下のご選択は、「国民と苦楽を共にする」皇室の精神をより深く体現されるプロセスとして極めて貴重なものだろう。