藤川 太
1968年、山口県生まれ。ファイナンシャルプランナー。東京、大阪、名古屋に拠点を持つ「家計の見直し相談センター」の看板相談員。教育費と老後資金の危機を憂える著書『サラリーマンは2度破産する』や『マイホーム、買ったほうがトク!』(ともに朝日新書)が好評。

「だって藤川先生、国の借金を返すには消費税の増税が必要なんでしょう。子供たちの世代に借金を残さないためには、仕方ないじゃありませんか」

社会保障と税の一体改革関連法案が衆議院を通過した数日後、家計相談に来られた田中涼子さん(39歳・仮名)が、私の顔をにらむようにしてこう言った。

田中家は4人家族。 41歳の夫は一流企業に勤めており、年収約800万円。にもかかわらず、まったく貯蓄ができないと涼子さんは訴える。

支出の内訳を見てみると、典型的な全方位タレ流し家計であることがわかった。あらゆる面で「ちょっとぜいたく」をしている。だから年収は十分あっても、貯蓄ができないのだ。

「たしかに国家財政の問題は重要ですが、増税によって家計がどれほど影響を受けるか、きちんと理解したうえで賛成した人がどれほどいるのでしょう」

「5%から8%へなんて、たった3%のアップでしょう。たいしたことないじゃないですか」

これこそまさに、全方位タレ流し家計の発想そのものなのだ。たいしたことないぜいたくの積み重ねが、ふと気づけば大きな出費になっている。しかし今回の増税は、決して「たいしたことない」レベルではない。ここ10年で、家計に対するインパクトが最も大きい出来事に間違いない。

「そ、そうなんですか……」

私は、増税の影響について具体的な数字をあげて説明することにした。そうしなければ、インパクトの大きさを理解してもらえないと考えたからだ。消費税率の引き上げは2段階で行われる。1回目は2014年4月で、8%へ引き上げ。2回目は15年10月で、 10%へ引き上げだ。家計への影響は消費額によって変わる。私は10%へ引き上げられた場合の影響を試算してみたが、結果は想像を上回るものであった。

・年収500万円の場合……11万7千円のアップ
・年収700万円の場合……15万4千円のアップ
・年収1千万円の場合……20万9千円のアップ

田中家の場合、これに加えて所得税の扶養控除廃止による実質的な増税が子供1人当たり3万3千円、合計で6万6千円になる。その他の社会保険料も年々上がり続けているから、最終的には年間で30万円近く支出が増えることになるだろう。