仮にAさんが「経理・財務マネジャー」や「経営企画担当」などのポジションからスタートしていれば、本人も過度に気負うことなく、「新たに学ぶ」という姿勢で臨めていたかもしれません。

転職をSNSなどで報告するとき、「**社にCxO(○○部長)として入社しました」と言いたい気持ちはよく分かります。しかし、入社後のなじみやすさ、働きやすさを考えると、まずは一メンバーかリーダークラスからスタートし、フラットな状態で既存メンバーと関係を築き、仕事ぶりを認められてから肩書を持つほうが、実力を発揮しやすいと思います。

実際、私が転職のお手伝いをしてきた方々を見ていても、「役職なし」で入社し、その後、順調に上のポジションへと上がっていくケースが多いのです。

パターン②リソースが足らず、過去の成功体験を再現できない

「新規事業立ち上げの責任者をあなたに任せたい。自由にやってもらっていい」

ベンチャー企業の経営者からそのように入社を請われ、意気揚々と転職したものの、早々につまずくケースもあります。

「自由にやっていい」と言われたものの、プランを推進しようにも「予算がない」「人員がいない」という状況に陥ることがあります。これまで実績を挙げてきてノウハウを獲得していても、それを再現するリソースがないのです。

Bさんもその一人でした。大手企業でITエンジニアとしてキャリアを積んできたBさんは、「新たなチャレンジがしたい」とベンチャー企業を目指し、「CTO」のポジションで転職を果たしました。

社長は面接で壮大なビジョンを語り、Bさんもそれに共感して入社を決意。ところが、フタを開けてみると財務状況が厳しく、新サービスの開発予算を十分に確保できなかったのです。アイデアはあるのに実行することができず、早々に再度転職活動をするはめになりました。

ベンチャー企業の幹部ポジションは、大きな裁量権を持ち、スピード感を持って推進できる点に魅力があります。しかし、やりたいことを実現するためのリソース(ヒト・モノ・カネ)がそろっていないことも多いものです。入社前にその点をしっかり確認することが重要です。

また、新規事業は経営トップの思いつきから始まることも多いのですが、ちょっとつまずくとすぐに撤退してしまうケースも見られます。対話を重ねて、「本気度」を確かめることをお勧めします。

履歴書を確認しながら面接をするマネジャー
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