内閣の「先送り」は裏切りに近い

ところが、政府がこの附帯決議に応えるために設置したはずの有識者会議が提出した報告書は、およそ誠実さとはかけ離れていたように見える。先に述べた通り「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」への検討は先送りして、その点についてまったく“ゼロ回答”だった。

そのゼロ回答の報告書を、岸田内閣はそのまま昨年の1月に国会の検討に委ね、その後、国会は1年以上もそれを放置したまま時間だけが経過した。

この状態にやっと変化が見え始めたのは今年になってからだ。そして先頃、岸田氏の指示によって国会での議論を主導すべく、自民党内の意見集約のために会議体が新設された。しかしその会議体も、看板だけは「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」と名乗りながら、やはり先のゼロ回答の報告書をベースとしてやり過ごしそうとしている及び腰ぶりが透けて見える。

皇室の側から一連の流れをご覧になれば、ほとんど「裏切り」に近く見えてもおかしくないはずだ。

西村長官が先の懇談会初会合の直後というタイミングで、改めて「問題の焦点は皇族数確保ではなく安定的な皇位継承にある」と、釘を刺さざるを得なかった理由もよくわかる。

「憲法違反」の疑いは晴れていない

なお、自民党の懇談会がベースにしようとしている報告書には、皇族数確保のために旧宮家系国民男性が現在の皇族との養子縁組によって皇族の身分を取得できる制度を新しく設ける提案も含まれている。

しかし、この提案は現実味が乏しい。

まず、憲法学者で東京大学教授の宍戸常寿氏などから「憲法違反」の疑いが指摘されている。

憲法第14条(法の下の平等など)において、皇統譜に登録された天皇・皇族を除き、戸籍に登録された国民の間では家柄・血筋つまり「門地」による差別が禁止されている。だから、同じ国民の中から“旧宮家系”という家柄・血筋だけを根拠として、他の国民には認められない養子縁組(皇室典範第9条)を例外的に認める制度を作ろうという提案は、どこから見ても憲法違反以外の何ものでもないだろう。

去る11月15・17両日にわたり、衆院内閣委員会でこの点について立憲民主党の馬淵澄夫議員が、繰り返し内閣法制局の見解をただした。しかし、答弁に立った内閣法制局の木村陽一第1部長は、最後まで説得力のある説明をおこなうことができなかった。

政府が新しい立法を企てて違憲の疑いが指摘された場合、その合憲性を論証する責任があるのは当然ながら政府側で、具体的には内閣法制局だ。その内閣法制局が国会の場で、違憲の疑いに対してきちんと「反証」できなかった事実は重い。