高齢者だから“乳房再建は不要”という大きな誤解

一方で、リモートワークなど働き方が多様化したことで、仕事と乳房再建を両立できた例も。まとまった休みが取れず乳房再建をあきらめていた人が、病室でリモートワークをしながら乳房再建手術に踏み切れた例もあったという。また、高齢者の乳房再建に対する世間一般のバイアスも見逃せない。

「高齢者だから乳房再建が不要というのも大きな誤解。高齢者でもエキスパンダーで皮膚を伸ばすことはできますし、私のクリニックで乳房再建を行った最高齢の方は、70歳のときに乳がん手術を受けた当時91歳の患者さんでした。再建して大好きな温泉を再び楽しめるようになったそうです。乳房再建はQOLを考えるうえで大切な治療のひとつ。どんな場所に住んでいても、何歳の方でも、保険適用で乳房再建は可能であるということを多くの人に知ってもらいたい」(岩平医師)

温泉につかる女性
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「乳房再建はアピアランスケアとしての選択肢のひとつ。今後の人生をどう生きたいか、自分自身がどうしたいかしっかり考えたうえで、患者さん本人に選択してほしい。当事者はもちろん、周囲の人間も乳房再建について正しい知識を持つことが大事です。医療従事者としても患者さんの隠れたニーズや思いを引き出すことも大切だと考えています」(片岡医師)

乳がんの手術を受けても、乳房再建という選択肢があることを知っていれば、治療に立ち向かう力になるはず。まずは正しく理解したうえで、受けるか・受けないかを選択していきたいものだ。

中島 夕子(なかじま・ゆうこ)
フリーライター&エディター

ヘルス&ビューティ系の記事を中心に、Web、雑誌、単行本などの執筆を手掛ける。