全世代がハッピーになれるかの鍵はシニアが握っている

小林武彦『なぜヒトだけが老いるのか』(講談社現代新書)
小林武彦『なぜヒトだけが老いるのか』(講談社現代新書)

この大勢の知識と経験豊富な方々にはぜひ「シニア」になっていただき、公共的に行動していただけたら、今後の日本の未来は明るくなると私は考えています、というか誰が考えてもそうでしょう。安心して子供が産めるような国にまた戻ると思います。

ここで子供の数(出生数)は象徴的に使っていますが、大切なのは、それだけの経済的、精神的余裕と将来展望、つまり簡単に言えば子供を作りたくなり、周りもサポートしたくなる空気感を作り出せるかどうかです。生まれてくる子供が幸せになれないような環境では、誰だって子供は作りたくありませんからね。

この「シニアが頑張って今の日本をなんとかする」構想は、長寿化の進化を牽引した、繁殖年齢を超えたヒトが子育てをサポートするという「おばあちゃん・おじいちゃん仮説」の延長線上にあり、全世代がハッピーになれる一つの有望な手段です。

小林 武彦(こばやし・たけひこ)
東京大学定量生命科学研究所教授(生命動態研究センター ゲノム再生研究分野)

1963年、神奈川県生まれ。九州大学大学院修了(理学博士)、基礎生物学研究所、米国ロシュ分子生物学研究所、米国国立衛生研究所、国立遺伝学研究所を経て現職。前日本遺伝学会会長。現在、生物科学学会連合の代表も務める。生命の連続性を支えるゲノムの再生(若返り)機構を解き明かすべく日夜研究に励む。海と演劇をこよなく愛する。著書に『寿命はなぜ決まっているのか』(岩波書店)、『DNAの98%は謎』(講談社ブルーバックス)、『生物はなぜ死ぬのか』『なぜヒトだけが老いるのか』(以上、講談社現代新書)など。