ドイツの場合は努力よりも「生まれ持った才能」が重視される

日本の場合、10歳ぐらいの子の成績があまり良くなくても、「これから頑張れば何とかなるかも!」とまだ夢を見ていられる段階なのではないでしょうか。10歳ぐらいであれば、まだまだ「これからの努力」で何とかなるという考え方であるわけです。

このように日本では「努力」が重んじられますが、ドイツの場合は努力よりも「生まれ持った才能」が重視される傾向があります。例えば数学が苦手な子供がいたとして、日本であれば「これから頑張れば苦手を克服できるはず」と考えることもできるわけです。でもドイツの場合は、極論を言うと、「数学に向いていないのかもしれない。職人コースに進んだほうが良いのでは」というような考え方がされがちです。日本のほうが「苦手でも上を目指して努力をする」ことが市民権を得ているというわけです。

勉強する中学生
写真=iStock.com/Milatas
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「努力すれば…」と夢を持ち続けられる日本社会の優しさ

サンドラ・へフェリン『ドイツの女性はヒールを履かない』(自由国民社)
サンドラ・へフェリン『ドイツの女性はヒールを履かない』(自由国民社)

私は子供の頃ドイツ人と日本人の両方に囲まれて育ちましたが、確かに日本人の大人は「人間は『やるか、やらないか』で差が出るだけ。だから努力が大事」というようなことを言う人が多かったです。逆にドイツでは、自分の苦手な分野に関しては早々と諦める人が多かった印象です。

20代で「今から英語を頑張ればアメリカで女優さんになれる!」というような夢を持ち続けるのは非現実的なことかもしれませんが、「10歳でスパッといろいろなことを諦めさせてしまう」よりは優しいシステムと言えるのかもしれません。

スパッと諦めるか、それとも苦手な分野でも努力して夢を持ち続けるか……そんなところにも文化の違いがあります。もちろん、人によるところも大きいというのは言うまでもありません。

※ドイツの学校のシステムは、州によって違いがあります。

サンドラ・ヘフェリン(Sandra Haefelin)
著述家・コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)、『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)、『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)など。新刊に『ドイツの女性はヒールを履かない~無理しない、ストレスから自由になる生き方』(自由国民社)がある。 ホームページ「ハーフを考えよう!