「10年後」につながる戦略とは?
企業が「伸びる」立地先の選び方
産業の空洞化を防ぎ地域経済が振興することを目指して、国も積極策を講じ、各自治体の動きにも変化が見られる。また、企業の拠点戦略にも新たな傾向がある。それらの具体的な状況を(財)日本立地センターの藤田成裕氏に聞いた。
藤田 成裕●ふじた・なるひろ
財団法人 日本立地センター 産業立地部 次長
日本立地センターは、企業立地に関する調査・研究、コンサルティング、研修等を行う総合的調査研究機関。日本が直面する多様な課題と向き合い、地域産業と地域社会の健全な発展に貢献。
最近の企業立地には、
どのような傾向が見られますか?
「平成23年工場立地動向調査(速報)」(経産省)によると、昨年の国内工場立地件数は869件で、前年よりも増加しました。また、私たち(財)日本立地センターが昨年秋に実施した「新規工場立地計画に関する動向調査」でも、「今後の新規立地計画がある」と答えた企業は前年より増えています(同調査の結果概要は>>こちら)。
2008年のリーマンショック以降、企業の設備投資は停滞する状況にありましたが、ようやく上向いてきたといっていいでしょう。実際に企業の方々と話をしていても、「設備投資がリーマンショック以前の水準に戻った」「少なくとも8~9割まで戻った」との声はよく聞かれます。
新規立地場所の条件として、東日本大震災後は、内陸部や地盤が固いエリアを希望する傾向が強くなったのも、最近の動きです。また、事業拠点をできるだけ集約し、効率化を図ろうという考え方に加えて、いまはリスク分散を目的に、例えば東日本と西日本、太平洋側と日本海側といった拠点の分散化も目立ってきました。
産業の空洞化を防ごうと、
国もアクションをとっています
2007年には「企業立地促進法」が施行されました。同法に基づいて、自治体は地域産業の活性化を目指す「基本計画」をつくり、国の同意を得れば一定の支援が受けられます。企業も施設の立地や事業の高度化を行う計画が都道府県知事に承認されると、優遇税制(特別償却)や工場を建てる場合の緑地面積の特例、人材育成制度など、最多で8つの支援措置が適用されるのです。
同法に続いて、2010年からは国が企業に対して直接、立地補助金を交付する制度も設けられるようになりました。現在は、東日本大震災からの復興を目指すとともに、超円高などによる海外立地への圧力を抑えるため、「国内立地推進事業費補助金」や「革新的低炭素技術集約産業国内立地推進事業費補助金」などが用意されています。