なぜメローニはイタリア国民に愛されるのか

メローニ首相の魅力は、人情味があるところだ。これまで時折、公の場で感情を抑えることができなくなり涙する場面もあった。メローニ首相が泣くときに共通していることがあると気づく。それは、志半ばにして人の命が不本意に奪われ、その人の未来が絶たれてしまった現状を目の当たりにしたとき、そして、困難や屈辱や残虐行為、人権が踏みにじられてもなお強く立ち上がり、回復して戻ってきた人々に感動したときだ。

2022年7月8日、安倍晋三元首相が街頭演説中に銃で撃たれて殺害された。その2カ月後、イタリア・カリアリで、メローニ首相が選挙演説中のステージにLGBTQ+の過激派活動家が乱入してくるという衝撃的なハプニングがあり、現場は凍りついた。

メローニ首相は、怯むことなく、この活動家とステージ上で質疑応答を1分続けた。

「私はあなたと違う考え方をする権利があります、あなたはそれに反対することができます、そして私たちはお互いの意見を尊重する。それが民主主義です」(メローニ首相)

メローニ首相は場の空気の切り替えが早く、理路整然としており、こういった過激派活動家や穏健派や反対勢力にも臨機応変に対応ができる。そんな度量と勇気、国民の心情に寄り添う姿が、老若男女、南北地域隔たりなく、すべての層の有権者が心を掴まれてしまう理由なのだろうと思う。

ヴィズマーラ 恵子(ヴィズマーラ・けいこ)
翻訳者・コラムニスト

通訳、翻訳、コーディネータガイド。イタリア・ミラノ郊外にて抹茶ストアと日本茶舗を経営する。福岡県出身。中学校の美術科教師を経て2000年に渡伊、フィレンツェ留学後ミラノに移住。在イタリア邦人の目線で現地から生の声を綴る。WEB連載に『イタリア事情斜め読み』。