「税率アップしか手柄にならないからやらない」

営業マンにとって、売上アップは手柄になる。手柄になることをやるのが営業マンの行動原理だというのと同じと考えてもらうと、分かりやすいかもしれない。

ただし、営業マンが売上を上げるのは正しいが、国益を損ねる政策は許されない。

私はこういう行動原理が隅々まで浸透している組織(財務省)で数十年過ごしてきたからよく分かる。

入省した1980年から40年以上にわたって、今この本に書いているのとそっくり同じことをくり返し主張してきたが、残念ながら何も変わらなかった。

「税率アップしか手柄にならないから、やらない……そんなことでいいのか!」と、天を仰ぐ読者が多いだろう。私も同感だ。だからこそ、さまざまなところで発信を続けている。

皆が本当のことに気づき始めている

まだまだ道半ばだが、希望はある。

2000年代の頭ごろから、徐々にではあるが変化が出てきた。

国会議員の中にも、財務省や日銀の主張に対して疑問を持つ人が、ちらほら出てきたのである。

自民党内に「積極財政の会」が立ち上がったのも、歓迎すべき変化であった。いまだ小規模な変化ではあるが、財務省に騙されない人たちが増えているようだ。

地上波では絶対に流れることがない私の主張も、Youtube「髙橋洋一チャンネル」などの動画配信サイトやTwitterなどによって多くの人に届けられるようになったのも良い傾向だ。だんだん皆が、本当のことに気づき始めている。

「値上げイコール悪」ではない

最近、さまざまな商品やサービスの価格高騰が話題になっている。次々と値上げが実施されて、家計の負担となっているのは確かだ。

ただ、「値上げイコール悪」ではないことは、知っておいた方がいい。

現状、値上げの大きな要因には、ポストコロナで経済活動が活発化したことがある。

コロナ禍で停滞していた物流、人流が少しずつ戻ってきた。需要が増せば物価が上がるのは自然なことだ。

そもそも、物の値段が上がらなければ、日本はずっとデフレのままということになる。物価は安いままだが、給与も上がらない。これは望ましい状態ではない。だからこそ日本は長年、デフレ脱却を目指してきたわけだ。

物価高が給料に反映されるまでにはタイムラグがあるので、しばらくは家計が苦しいかもしれないが、いずれ賃金も上がってくる。