メガバンク買いの理由【2】今起こっている欧米の金融危機の影響

今ある欧米の金融危機も、日本の銀行への直接的な影響は限定的と考えています。SVB破綻の原因となった米国の金利急騰は、日本の銀行にも影響しています。米金利急騰で、外債に含み損を抱える銀行が増えました。ただし、日本の大手銀行は今、全般的に不良債権比率が低く、保有する株式に含み益があるため、財務的な問題はほとんどありません。

日本には、SVBのように、ALMの初歩を踏み外した銀行も、CSのように投資銀行業務で過剰なリスクを負っている銀行も無いと判断していますので、今回の欧米の信用不安が日本の銀行に連鎖することはないと予想しています。

ただし、日本の銀行も、間接的に大きなマイナス影響を受ける可能性が出ています。今回の危機で、世界的に金利が低下しました。金利低下は、長期的に銀行の利ザヤを低下させる懸念があります。日本の銀行にとって影響が大きいのは、日本の長期金利が低下した影響です。

日本の銀行は、長期金利をゼロ近辺に固定する日銀の政策で、長らくダメージを受けてきました。昨年12月、日銀が長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げた時、やっと国内商業銀行業務の収益性が改善する期待が出たことを好感して、日本の銀行株は急騰しました。

ところが、3月に入り、欧米の金融危機が伝播すると、日本の長期金利は一時0.25%に戻ってしまいました。0.5%への長期金利引き上げに喜んだのも束の間、また元の低金利に戻る懸念から、日本の銀行株は暴落しました。

【図表3】日本の長期金利(10年国債利回り)と、東証・銀行株指数の推移:2016年1月-2023年3月(22日)
出所=QUICKより楽天証券経済研究所が作成

長期投資していく価値が高い

先行きのインフレがどうなるか不透明ですが、私は日本にもしぶとくインフレが定着すると予想しています。欧米の金融危機が収束すれば、また日本の長期金利にも上昇圧力が働くと予想しています。そうなると、三菱UFJの株価も見直されて反発していくと予想しています。

仮に長期金利が上昇しないとしても、三菱UFJは、海外ビジネスの拡大や、ユニバーサルバンク経営(投資銀行業務などへの多角化)で安定的に収益を稼いでいく力があると考えています。欧米の金融不安が収まるまで、不安定な値動きが続きそうですが、今の株価は割安で、長期投資していく価値が高いと判断しています。

窪田 真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所所長 兼 チーフ・ストラテジスト

1961年生まれ。84年、慶応義塾大学経済学部卒業。住友銀行、住銀投資顧問を経て、99年から大和住銀投信投資顧問。2004年11月に日本証券アナリスト協会の企業会計研究会委員に就任。07年には企業会計基準委員会の専門委員を務めた。14年2月から現職。