Q6. 今後の暮らしはどうなる? 今すべきことは?

世界が激動するいま、今後の動きは流動的です。考えられる4つのパターンを図6に示しました。

1つめは、景気がささやかな回復に向かうコース。最も望ましい方向ですが、有効な景気対策が示されないなかでは期待薄でしょう。

2つめは、悪いインフレ(スタグフレーション)に陥るケース。断続的に物価が上がり、家計はジワジワ苦しくなります。現状では、この可能性が最も高いと考えられます。

3つめは、世界のマーケットが大幅下落し、世界同時不況が始まるケース。この可能性があることも頭に入れておきましょう。

4つめは、デフレが復活するケース。世界の変化が始まったいま、逆戻りの可能性は低いと考えます。

可能性の高い順に並べれば、2→3→1→4、になるでしょう。

今後の暮らしを守るうえで念頭に置きたいのは、食料もエネルギーも輸入に頼る日本では長期的な物価上昇は避けられない、ということです。有事のときはもちろん、世界の人口が増えて食料やエネルギーが不足するようになれば、生産国は他国に売ってくれなくなるはずです。

物価が上がれば、相対的にお金の価値が下がります。物価上昇以上に預金金利が上がらない限り、預貯金は目減りすることになります。

この対策として有効なのが投資です。海外資産に投資する投資信託を積み立て購入するといいでしょう。過度な投資は禁物です。何があっても対応できるよう、流動性のある預貯金をしっかり持っておくべきです。

もっと重要な対策は、収入を確保し、さらに増やす方法を探して実行すること。節約だけでは変化に対応できません。どんなときでも稼げる力を身につけることが、家計を守る最も有効な対策となるのです。

図6 今後のインフレ 4つのコース
ハイパーインフレの可能性は?
過度に物価が上がる状態がハイパーインフレ。国際会計基準では「3年間で累積インフレ率100%以上」が定義とされています。
日本でも第2次世界大戦後にハイパーインフレが起きました。原因には、軍事費用として膨大な額の国債を発行したことと、戦禍で生産に壊滅的被害を受けたことがあります。
現在の日本でハイパーインフレが起きる可能性は極めて低いといえます。むしろ、不安を煽る詐欺商法に注意すべきでしょう。

構成・図版=有山典子

深野 康彦(ふかの・やすひこ)
ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャルリサーチ代表。1962年生まれ。クレジット会社を経て独立系FP会社に入社、96年に独立。30年以上の実績を持つ日本のFPの草分けの1人。さまざまなメディアやセミナーを通じて家計管理や資産運用、マクロ経済まで幅広く発信するとともに相談業務も行っている。生活者の立場に寄り添う解説とアドバイスにファンが多い。『55歳からはじめる 長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)など著書多数。