現在13位のタケダだが、11年ナイコメッド買収で12位に上昇予定。欧米メーカーが10位以内を独占する。

そして、やっとタケダは動き出す。08年にミレニアム、11年にナイコメッドを買収するが、特にナイコメッド買収の意義は大きかった。癌の領域に強く研究開発型のバイオ医薬品会社であるミレニアムの買収は、タケダの従来型のビジネスの線上に位置するのに対して、ナイコメッドの買収は、タケダにとって未開拓である新興国攻略の新しいストーリーを得たことを意味するからだ。実は、タケダは「ナイコメッド」買収前にも、欧州で買収先を物色し、ようやく成立したのが、ナイコメッドの買収だった。

この買収により、タケダの医薬品販売網は、これまでの28カ国から、一気に約70カ国へと拡大した。特に長谷川がこだわりを見せた新興国の売り上げは、買収前の8倍以上となった。ナイコメッドは、新興国の中でも、ロシア、東欧、中南米市場に強い。特に東欧市場では、買収成果が比較的早くから表れると見込まれているだけに期待も大きい。長谷川は、約1兆1000億円を投じて、新興国市場の出遅れを“買い戻した”のだ。

しかしながら、世界の壁はまだ厚い。ナイコメッド買収後も、タケダの世界ランキングは10位にも届かず、ファイザー、ロシュなど、圧倒的な売上高を誇り、その国を代表するような“メガファーマー”と比べると、国内最大のタケダだが、“準メガファーマー”扱いだ。メガファーマーを目指して引き続き買収を繰り返すのか、筋肉質の経営を目指すのか、タケダは今、選択を迫られている。

ここで、世界の医薬品メーカーが直面する「2010年問題」を説明しておきたい。売り上げ1000億円を超える「ブロックバスター」と呼ばれる主力製品が、2010年前後に特許切れして、売り上げが急減してしまう状況のことだ。

2010年前後に大型医薬品の特許が一挙に切れる「2010年問題」。タケダの主力商品、タケプロンが09年、アクトスが11年、ブロプレスが12年に同問題に直面する。10年度、3商品の合計売上高は7000億円強、タケダの悩みは深い。

通常、医薬品は特許によって20年間保護されているが、その後は、他社が自由に同じような薬を販売することが可能になる。医薬品の特許切れにより、臨床試験の巨大なコストがかからない後発医薬品(ジェネリック)が増える可能性が出てくるが、逆にいえば、特に新薬創出型の医薬品メーカーの収益が大きく圧迫される。

そして、タケダもその例に漏れず“ブロックバスター”の特許切れの問題を抱えている。09年に抗潰瘍薬「プレバシド(タケプロン)」、11年に糖尿病薬「アクトス」の特許が切れた。そして2012年は、高血圧薬「ブロプレス」の“ブロックバスター”が、特許切れを迎えるため、これらの稼ぎ頭で屋台骨である商品の売り上げは、大きく減少する。こういった危機感も、タケダのグローバル化を後押しする一つの要因となっている。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(川本聖哉=撮影)