中小企業の7割で「男性の育休取得なし」

言うまでもなく日本の女性活躍など多様性の確保については、欧米に比べて周回遅れの状況にある。男性の育児休業取得率もそうだ。

2019年10月から2020年9月末までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、21年10月までに育児休業を取得した者の割合は13.97%。前回調査より1.32ポイント上昇したが、依然として低い(厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」)。さらに育児休業の取得期間は「5日未満」が25.0%、「5日~2週間未満」26.5%と、2週間未満が5割を超える。女性の10カ月以上の取得者が8割を超えているのと対照的である。

男性の低取得率の原因の1つは、日本企業の圧倒的多数を占める中小企業にある。男性の育休取得実績の有無では従業員300人以上の企業は59%であるのに対し、300人未満は26%。実に70%の企業では取得した男性がいない(エン・ジャパン「改正育児・介護休業法」実態調査)。

哺乳瓶からミルクを飲む赤ちゃん
写真=iStock.com/kazuma seki
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「産後パパ休暇」に不満をもらす中小企業人事部

また、この10月から改正育児・介護休業法により、育休とは別に子どもの出生後8週間以内に最大4週間の利用が可能な「産後パパ休暇」制度が始まる。この制度について、中小企業の人事担当者には不満の声も少なくない。

流通・小売関連業(従業員50~99人)の人事担当者は「働き方の自由度を高める施策のように感じられるが、実際は制度や規制によってがんじがらめになってしまうことが懸念される」と言っている。

さらに「女性社員は、結婚・出産を機に仕事を辞めるもの、男性は育児に非協力が普通という考えを常識としている人が多い社内においては、何をするのも難しい(不動産・建設関連/50~99人)という声も上がっている。いまだに寿退社推奨や性別役割分業意識が色濃く残っている会社もある。

また、従業員300~999人のサービス関連業の人事担当者も「国の方針とはいえ、日本の風習や慣習を大きく変えることであり、性急な感じが否めない。もう少し時間をかけて徐々に浸透させてほしいのが現場サイド意見である」という保守的な意見もある(以上、エン・ジャパン調査の自由回答)。

男女別の育児休業取得率の開示義務は従業員1000人以上であり、多くの中小企業は開示義務から外れる。旧態依然とした意識や慣習を持つ企業でどれだけ男性の育児休業取得が進むのか、はなはだ疑問だ。