溶けにくいアイスの開発は苦難の連続だった

狙いどおり、わたぼうしは10、20代の若い層を中心にヒット。その直後、「もっと幅広い層に売れる商品にしたい」との想いから、マシュマロに代わって日本の伝統食材である“餅”で包んでみよう、と着想したそうです。

ただ、当初は苦難の連続でした。餅は、高温で柔らかくのびるようにしなければ、アイスをうまく包めない。でもアイスは、言うまでもなく温めると溶けてしまう。この相反する素材を、どう融合させるか。

ロッテ ブランド戦略部 大塚雄記さん
写真提供=ロッテ
ロッテ ブランド戦略部 大塚雄記さん

何度も試行錯誤を繰り返し、ようやく「溶けにくいアイス」の配合や製法にたどり着いたものの、今度はアイスを包んだあとの課題に直面します。

それが冷えると硬くなりやすいという、餅の特性です。

たった1年で「冷凍しても柔らかい餅」を開発、販売

当初から、雪見だいふくには「食べた人々に“笑顔”になってほしい」との想いが込められていました。もし餅を、冷凍した状態でも柔らかく保つことができれば、冷凍庫から出して食べる際に、ふわっとした幸せや癒やしを感じてもらいやすいはず。

「そこで餅のほうも、餅粉の品種や産地、糖の配合比率や粒子のサイズなど、膨大なパターンを一つひとつ、検証していきました。アイスを包む機械も、新規に開発。ようやく、イメージする商品にたどり着いたのです」(大塚さん)

驚くのは、こうした素材の黄金比の割り出し(現在も企業秘密)から製造までを、わずか1年で終えたこと。わたぼうしの発売から約1年後、81年10月には、すでに雪見だいふくが店頭に並んでいました。

いかにロッテが、総力を結集して開発した商品であったかが分かります。