「もう放っておきましょう」と医師は言えない
夕張市の市民の間では、三大死因の「ガン、心臓病、肺炎」は減ったのに、全体の死亡人数は変わりませんでした。つまり、ほかの原因で亡くなる人が増えたということです。その原因とは何か?
夕張診療所の方によれば、それは「老衰」だったと言います。
老衰は、病気ではなく、少しずつ体が弱って死ぬことです。「天寿をまっとうした死に方」と言ってもいいでしょう。
老衰の場合、多くは家庭や老人ホームなどで息を引き取ることになります。
夕張市では病院が小さくなったため、在宅医療への切り替えを余儀なくされた人もいました。患者さんが入院を望まず、在宅医療を選択したケースが多かったと聞いています。
85歳を過ぎた人は、体の中に「複数の病気の種」を抱えています。明らかな症状はなくても、何らかの不調はあるはずです。
この状態で病院に行けば、たいていの医師は検査をしたり、薬を出したりするでしょう。現代においては、それが当然の医療だからです。逆にそれをしなければ、「あの病院は薬もくれない」と文句を言われてしまいます。
でも、本当にそれが正しい医療なのでしょうか?
ぜひもう一度、考えてみてほしいのです。
医師は病院に来た高齢者に対し「もう年だから、放っておきましょう」とは言えません。であるならば、患者さんが選択するしかありません。
病院で検査をして病気を見つけてもらい、薬や手術をして寿命を延ばすのか、自宅や老人ホームで好きなことをしながら生きるのか――。
それは、医師ではなく、自分が選択することなのです。
高齢者になれば、病気は全快しません。一時的に快方に向かっても、悪い部分は次々と現れます。厳しい言い方ですが、それが年を取るということなのです。