ロシアのウクライナ侵攻がインフレを悪化させた

ここまでの米国株式市場を簡単に振り返ったところで、次にロシアのウクライナ侵攻が市場に与えた影響を整理していきましょう。

市場に与えた最初の影響は原油やコモディティ価格の上昇でした。ロシアの侵攻以降、WTI原油先物の価格は上昇。一時130ドル台をつけました。現在はUAEが増産を支持することを表明したことで10%程下げましたが、いまだ近年では高い水準にあり、値動きも荒く、今後も予断を許さない状況となっています。

ロシアの侵攻によって引き起こされた、エネルギーやコモディティ、食品価格の上昇は、元々あったインフレの問題をより深刻にしました。

エネルギーや食品価格の高騰は、消費者が他のものに費やすお金を奪うため、経済成長に悪影響を与えます。また、燃料費や原材料費の高騰は、企業の利益率を圧迫しますし、消費が鈍化すれば企業事業への投資も少なくなり成長は鈍化します。

ガソリン価格急騰の見出しと電卓と一万円札
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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2022年の経済成長率は1%削り取られる

また、ロシアのエネルギーへの依存度が高いユーロ圏では、米国や英国よりも経済への影響が大きくなると予想されます。とはいえ、ロシアのウクライナ侵攻の直接的および間接的な影響が、どうなるかは不確実性が高く、予測したり数値化するのは非常に難しいものがあります。

参考として、米バンガード社の経済チームは、景気後退を招くほど状況が悪化する条件として、「原油価格が数四半期にわたって、1バレル130ドルから150ドルの範囲に上昇」し、「金融環境が広範囲に引き締められる」必要があるとしています。現状はそこまで深刻な事態には陥っていません。

また、エネルギー価格の持続的な上昇と金融条件の引き締めは、ユーロ圏、英国、米国でこれまで予想されていた2022年の経済成長率を「最大1%」削り取る可能性があるとしています。JPモルガンやバークレイズも、世界の成長見通しを約1%下方修正しました。両社はインフレ率も1%上方修正しています。しかしながら、各社とも経済成長率の見通しを1%ほど引き下げただけで、「0」や「マイナス」というわけではないですし、そこまで悲観的で、ひどい予想でもないと個人的には思います。