「嫌消費」の裏側に若手社員の「劣等感」

ジェイ・エム・アール生活総合研究所社長 松田 久一 まつだ・ひさかず●1956年、兵庫県生まれ。同志社大学商学部卒業後、情報家電、食品、日用品業界にてリサーチ実務を経験。著書に『「嫌消費」世代の研究』(東洋経済新報社)などがある。

「クルマ買うなんてバカじゃないの?」

こんな新人の発言を初めて聞いたとき、私はわが耳を疑いました。いま50代前半の私のような者にとって、クルマは夢であり、憧れ。初給料でローンを組んで購入するのがクルマだったのですから。

クルマだけではありません。大型テレビに海外旅行……、新人はどれにも関心を示さず、内向的で節約型。節約すれば当然預貯金が増えます。「30歳までに1000万蓄える」という声もよく聞きます。こうした消費志向は、とりわけ「バブル後世代」に共通する価値意識。バブル後世代とは、団塊ジュニアと少子化世代の間に位置し、1970年代終わりから80年代前半の生まれ。いま、20代後半から30代前半です。

彼らは消費をしないわけではありません。ただ、収入に見合った消費をしない心理的な態度を持っています。これを私は「嫌消費」と名付けました。若い世代の消費嫌いは、彼らの時代体験から生まれる共通の世代心理や価値観に原因があります。

私たちの調査によれば、バブル後世代には4つの顕著な特徴を見いだすことができます。

まずは上昇志向です。「ワンランク上の生活がしたい」「同世代より頭一つ抜け出したい」――。バブル後世代には、そう考える傾向が強くあります。それは、彼らが拝金主義者だからではありません。いまの実力主義の時代では「勝ち組」になるしかないのです。第2に「人間関係を広げたい」「他人のために役立ちたい」という他者志向が目立ちます。第3の特徴は競争志向です。特に女性にその意識が強い。この世代の女性の就職氷河期体験は男性以上に厳しいものがあったことが影響しています。