企業内の人的資本の蓄積はメンバーシップ型が有利

今後求められるビジネスのイノベーションは、メンバーシップ型のほうが生まれやすいとみることもできます。今後はAIで代替できない「ホスピタリティ」「マネジメント」「クリエイティビティ」の3つの仕事の重要度が増すことは必至です。

サービスやソリューションも、ますますソフト化していきます。そのとき、物量で中国に負ける日本では、既存技術の上手な使い方を思いつくことや、既存のリソースを使って何ができるかを突き詰めることが、イノベーションを起こす近道となるでしょう。

しかし、社内の暗黙の情報を共有し、誰がどこで何をしているかがわかっていて、あうんの呼吸のような連携が取れる状態になければ、それを実現することは難しいのです。

誰と連携するか、誰と誰を一緒のチームにすれば、能力を補完し合ってチームが回りやすいのかといった、企業内の人的資本の情報の蓄積は、従来のメンバーシップ型のほうが容易にできる可能性があるのです。

また、従業員間の教え合い、助け合いもメンバーシップ型のほうが活発化する傾向があるようです。

ビジネス人材
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中間管理職以下は人的ネットワークの活用が不可欠に

一方で、役員など上級管理職はジョブ型で公募するほうが、経営人材の流動化などの意味でも適当ではないでしょうか。「上級管理職ほどジョブ型で」が日本経済復興の処方箋です。

なお、ジョブ型への転換が一定以上進むなら、中間管理職以下の人は同じ職業、趣味、同窓のつながりなどを大切にし、メンバーシップ型で培われていた人的ネットワークを各自で補填する必要があります。

大学の機能としての同窓会の役割が大きくなってくるかもしれません。

構成=奥田由意

飯田 泰之(いいだ・やすゆき)
明治大学政治経済学部教授

1975年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専攻はマクロ経済学、経済政策。『経済学講義』(ちくま新書)、『日本史に学ぶマネーの論理』(PHP研究所)など著書、メディア出演多数。noteマガジン「経済学思考を実践しよう」はこちら