日本人は「申し訳ない」と思わないように注意
ここまで、感謝をする習慣をつけると、ネガティブな気分が減り、幸福感を感じ、利他的行動が増え、well-beingが上がること、さらに、脳の状態まで変化させることについて説明をしてきました。ただし、これらは、主にアメリカなどからの研究報告です。
スペインはアメリカに比べ、感謝をする文化ではないことが知られています。そのスペインにおいても感謝を書き出す習慣や感謝を伝える習慣をつけることで、well-beingが上がることが示されています。
ところが、感謝が重要視されているはずの日本で行われた同様の実験では、well-beingが上がらなかった、という衝撃の結果が出ています。この理由として、日本人は感謝をする時に、同時に申し訳ない、という思いが生まれることが挙げられています。確かに多くの日本人はお礼を言う時に、「○○していただいて申し訳ありません、ありがとうございます」と言うのではないでしょうか。
純粋な感謝の気持ちがwell-beingを上げることは十分に示されているのですから、私たち日本人は、申し訳なかったという思いをかき消すくらい、どれだけありがたかったか、という感謝の気持ちに集中して、感謝を日々見つけていくことが、well-beingを上げ、心身ともに健康的な生活を行っていくことにつながるのでしょう。
<参考文献>
・Wood, A. M., Maltby J, Gillett R, Linley PA, Joseph S. The role of gratitude in the development of social support, stress, and depression: Two longitudinal studies. Journal of Research in Personality. 2008; 42(4): 854-871.
・Wood, A. M. Joseph S, Lloyd J, Atkins S. Gratitude influences sleep through the mechanism of pre-sleep cognitions. Journal of psychosomatic research. 2009; 66(1): 43-48.
・Boehm JK, Vie LL, Kubzansky LD. The promise of well-being interventions for improving health risk behaviors. Current Cardiovascular Risk. 2012; 6(6): 511-519.
・Paul J. Mills, Wilson K, Punga MA, Chinh K, Pruitt C, Greenberg B, Chopra D. The Role of Gratitude in Well-being in Asymptomatic Heart Failure Patients. Integrative Medicine: A Clinician's Journal. 2015; 14(1): 51.
・Kyeong S, Kim J, Kim DJ, Kim HE, Kim JJ. Effects of gratitude meditation on neural network functional connectivity and brain-heart coupling. Scientific reports. 2017; 7(1): 5058.
・Emmons RA, McCullough ME. Counting blessings versus burdens: an experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life. Journal of personality and social psychology. 2003; 84(2): 377-389.
・Karns CM, Moore WE 3rd, Mayr U. The Cultivation of Pure Altruism via Gratitude: A Functional MRI Study of Change with Gratitude Practice. Front Hum Neurosci. 2017
・相川 充(2012).幼児の感謝表明を促すソーシャルスキル・トレーニングの効果.日本教育心理学会第54回総会発表論文集, 736.
・相川 充・矢田さゆり・吉野優香(2013).感謝を数えることが主観的ウェルビーイングに及ぼす効果についての介入実験.東京学芸大学紀要総合教育科学系Ⅰ,64,125-138.
内閣府Moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業T創発的研究支援)研究代表者。脳情報を利用した、子どもの非認知能力の育成法や親子のwell-being、大人の個別最適な学習法や行動変容法などについて研究を実施。