日本の女性政治家に対する世間の視線

さて、この連載で現代の女のあり方について細々と書き続けている私としては、2020年の半沢セカンドシリーズ後半戦で絶対に無視できない登場人物がいた。そう、江口のりこ演じる国土交通大臣・白井亜希子だ。

「い・ま・じゃ・ない」「恥を知りなさい」。キャスター出身で、長身を白いスーツに包み、破綻寸前の帝国航空を再建させるべく私設再生検討チーム「タスクフォース」を率いる白井は、そのキャラクター設定の中に蓮舫衆議院議員や滝川クリステル、小池百合子都知事、三原じゅん子参議院議員たちのファッションや発言を織り込んだ見事な風刺であり、現代日本の表舞台を張る「女性政治家」の引用の総体ともいえる存在だった。

ドラマ自体も、白井というキャラクターも、見る者によって好き嫌いはあるのだろう。半沢の妻である花(上戸彩)や、かつては銀行員だった小料理屋の女将・智美(井川遥)の役割や描かれ方には、さすがに“半沢穏健派”の私でもふっと苦笑含みのため息くらいは出る。でも代わりに、白井がどう描かれ、世間からどういう反響を得るかで、日本が女性政治家というものに期待しているのかそれとも絶望しているのか、そんな視線が測れるのじゃないかという気がしていた。

担ぎ上げられた女が見せる「一本調子」と「能面」

白井はバックに進政党・箕部幹事長(柄本明)の絶大な権力を借りて政界デビュー、「お前はお飾りだから」と屈辱的な言葉を浴びせられながら、帝国航空再生では当然のように箕部の意思に従い、各行へ債権放棄を一本調子に迫る。

そう、政治方針もセリフも、一本調子だった。箕部幹事長の顔色をうかがい怯え、政界で生き残るためには感情を悟られてはならないとでも言うかのように、能面のようにこわばった無表情を張り付かせていた。そんな場所へ担ぎ上げられ、そんな役割を負わされ、だけどこの局面を成功裏に乗り切れたのならきっと自分は女性政治家として成功するのだ。押し潰されそうな重圧の中で、白井は感情の揺れを見せまいとする「一本調子」と「能面」で、任務を遂行しようとする。

ああ、女性政治家って、というか表舞台に背伸びして立たねばならぬ瞬間の「できる」女の人って確かにそういうところがある、強くあらねばと思って感情を殺すところがある、と思いながら、白井の能面を見守った。演じるのは、怪女優(褒めています)の江口のりこである。演技力不足なのじゃない、他の役者たちが大声で叫び顔芸を競い、全身で大きな芝居をする中で、演出はむしろ表情のなさ、抑揚のないセリフ回しで「つまらない人形」として抑制的に描くことで、白井大臣がいかに抑圧されているかを表現したのだ。