今ではドラッグストアのヘアケアコーナーで大々的に並べられている「ボタニスト」。見たことがないという人は少ないのではないでしょうか。でも、ボタニストを発売した会社の名前を知っている人は少数派でしょう。なぜ、無名のベンチャー企業が激戦のシャンプー市場で大ヒットを出せて、大手は出遅れたのでしょうか。マーケティングのプロが解説します。

激戦のシャンプー市場で異質な存在

「ボタニスト」というヘアケア製品をご存じの方は多いでしょう。使ったことがなくても、白と黒を基調とした文字だけのシンプルなパッケージを見れば、「ああ、あれね」と思うはず。いまやどこのドラッグストアでも見かける人気商品ですが、意外なことに、このボタニストを販売しているのは、ユニリーバでもP&Gでも資生堂でも花王でもありません。I-ne(アイエヌイー)という、正直いって聞きなれない名前の会社です。なぜこの小さな会社が、大手を抑えてこれだけのヒットを生み出せたのでしょうか。

現在ボタニストは、ヘアケアだけでなく、スキンケアも展開。写真提供=I-ne
現在ボタニストは、ヘアケアだけでなく、スキンケアも展開。写真提供=I-ne

今回はボタニストをめぐるあれこれについて、お話ししてみたいと思います。

シャンプーマーケットの特徴は、商品の種類がやたらと多いことです。だからシェアを10%でも超えたら売り上げの上位にランクインしますし、15%をとれたら「お化けブランド」と言われる世界です。そんな激戦区で約20年もトップを走り続けていたのが、ユニリーバの「ラックス」でした。

そこに突如として現れたのが「ボタニスト」です。ボタニストが発売されたのは2015年の1月。最初はネット通販のみでしたが、インスタ映えから瞬く間に人気に火がつきました。

ドラッグストアの棚に並んだ「ボタニスト」のボトルを見て、新鮮な印象を受けた人は多いのではないでしょうか。それまでこんなに素っ気ないパッケージの商品は、ほとんどなかったからです。