3.仕事を“二番手”にする

3つめの策は、ツーオペ育児ができるよう夫に働き方を変えてもらうことです。子育てに理解のある会社に転職する、残業のない部署に異動する、あるいは会社員ではなくフリーランスや自営業の道を模索する、といったことですね。

これは夫のキャリアにとって大きな決断になるだけでなく、妻のほうも家庭全体の収入が下がる、つまり生活レベルが下がると覚悟する必要があります。極端に言えば、いったん育児を最優先にして仕事を二番手にするということです。

いま4歳と0歳の子どもを育てていますが、もっと子どものそばにいたいという思いから、教員以外の仕事を大幅に減らしました。講演会や執筆活動を減らしたため、年収は大幅にダウンしましたが、後悔はまったくありません。自分にとっては、子どもの成長を見られる喜びのほうが大きかったからです。

ただし、これは私の個人的な価値観によるものです。私はもともと働くことがそれほど好きではなく、子どもと遊んでいるほうが楽しいタイプ(笑)。猛烈に働いて稼ぐことが男らしいとされる日本社会では、私のようなタイプは少数派と言えるでしょう。

それでも、妻のほうから「収入が減ってもいいから子どもと過ごして」と提案するのは大いにアリだと思います。「男性は皆、目いっぱい働きたいに違いない」というのは思い込みかもしれません。昭和的な男らしさにとらわれず、ぜひ一度提案してみてほしいですね。

4.自分が大黒柱になる「逆ワンオペ」

4つめは、育児を全面的に夫に任せる「逆ワンオペ」です。今は男性よりキャリア志向が高く、バリバリ働きたいという女性もたくさんいます。家庭のことは夫に任せて自分が大黒柱になる。そんな女性もこれからは増えていくでしょう。

男性の中にも、大黒柱の座から降りたいと願う人が増えてきていますから、提案してみたら意外にすんなりと受け入れられるかもしれません。私だったら、諸手を挙げて賛成すると思います(笑)。

日本における男らしい人とは、今も競争社会を勝ち抜ける人。しかし、そんな風潮は男女どちらにとっても重荷でしかありません。これから結婚する人は、できれば「異類婚」を検討していただきたいですね。バリバリ働きたい女性は、キャリア志向ではない男性と結婚する道もあります。パートナー選びに際しても、従来の男らしさにとらわれない選択をしていただければと思います。

構成=辻村 洋子 写真=iStock.com

田中 俊之(たなか・としゆき)
大妻女子大学人間関係学部准教授、プレジデント総合研究所派遣講師

1975年、東京都生まれ。博士(社会学)。2022年より現職。男性だからこそ抱える問題に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて男女共同参画社会の推進に取り組む。近著に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。