日本でも命の選別はあり得るのか

──医療崩壊がおこっている欧州の一部では、助かる可能性が高い人に優先して人工呼吸器や人工肺(ECMO)を回すという報道があります。いわゆる「命の選別」のようなことが、日本でも起こるのでしょうか

【高山】COVID-19の特徴として呼吸困難が出てから悪化するまでが早いという印象があります。中国における確定患者44,672例の報告によると、14%が重症化しており、5%が生命の危機に陥ったとされます。死亡したのは全体の2.3%です。とくに、50歳を超えると加齢とともに致命率が上昇します。

高齢者のほか、高血圧などの循環器疾患、糖尿病、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患、がん、各種免疫不全、人工透析などの基礎疾患があると重症になりやすいようです。妊婦が重症化しやすいとする報告はありませんが、胎児への影響が疑われており注意が必要です。

日本は人工呼吸器の台数は多いのですが、ECMO(エクモ)は不足するかもしれません。日本語では体外式膜型肺といい、人工呼吸器でも呼吸ができなくなった患者さんの静脈とポンプをつなぎ、人工肺で静脈血に酸素を供給した後で再び、患者さんの静脈または動脈へ血液を戻す生命維持装置です。感染で傷ついた肺を休ませることができるので、回復が早いといわれています。

60代の男性と20代妊婦の場合……

【高山】ただ、ECMOは機器の不足に加えて、安全に操作できる医療従事者が不足する可能性があり、優先順位の問題が出てくるかもしれません。

たとえば、60歳の男性がその施設に1台しかないECMOを使っていたとします。その後から20代の妊婦さんの呼吸状態が悪化してECMOが必要になったとしましょう。年齢や生き延びる確率、平均余命で選別をするならば60歳の男性のECMOを外して、20代の女性につなぐ選択が支持されるかもしれません。まして、その女性の身体には2人分の命が宿っているのですから。しかし、現実として60歳の男性からECMOを外すことはできません。外すと同時に亡くなるので、殺人とされる可能性があります。

現場の医師は20代の女性に対して人工呼吸器による治療を懸命に続け、万が一の時は「全力をつくしましたが、残念ながら助けられませんでした」とご家族にお伝えするしかないと思います。