風土改革は「言い続ける、やり続ける、あきらめない」

この時、初めて自分の気持ちに気がつきました。執行役員として担当する、全社の働き方改革・ダイバーシティ推進という仕事を、私はどうしてもやりたいんだと。そう正直に伝えると、娘は「だったら行ってもいいけど、週1回は必ず帰ってきてね」と言ってくれたのです。

私は今も、この約束を愚直に守っています。大事なのは、子どもには常に「あなたが一番大事だよ」と伝え続けること。娘から泣いて電話がかかってきた時は、その直後に新幹線に飛び乗って大阪へ帰りました。

その際、「必要な時には、社員が家庭を優先することができる風土にすることも、あなたの仕事なんだから」と背中を押してくれた上司には心から感謝しています。

JTBでは今、経営改革の一環としてグループカルチャー改革に取り組んでいます。具体的な進め方として、働き方改革、評価マネジメント改革、ダイバーシティ改革、キャリア改革、コミュニケーション改革の5つの改革を同時進行で進めることによって、企業風土を変えていこうとしており、私はその旗振り役を務めています。

例えば、ダイバーシティ改革では、各部門各個所ごとのダイバーシティ浸透度を偏差値を用いて「見える化」したほか、女性社員に自信を持たせるための研修「なでしこフォーラム」や、男性上司の意識変革を促す「イクボスセミナー」、多様な性のあり方を啓蒙する「LGBTセミナー」など、さまざまな施策を展開しています。

また、コミュニケーション改革では、経営陣と社員が直接対話するランチ会を実施しているほか、各職場の好事例を共有できるコミュニティサイト「Smileプロジェクト 掲示板」も立ち上げました。現場からの活発な意見が飛び交っています。働き方改革では、朝型勤務やテレワークなど、柔軟な働き方を強力に進めています。

しかし、カルチャー改革を進めていくには時間がかかります。解決すべき課題もたくさんあります。成果が形で見えにくいだけに、社員一人ひとりの実感にまで落とし込むには、まだまだの段階で苦しいことも多いのですが、推進担当としての現在の私のモットーは「言い続ける、やり続ける、あきらめない」。会社の持続的な成長のため、社員ひとりひとりの幸福のため、あきらめずに言い続けてやり続けて力を尽くしていきたいと思っています。

最後に、皆様へのアドバイスとして、私が常に実行している2つのことをお伝えします。1つめは、困難に直面しても前向きに捉える「ポジティブシンキング」。2つめは、1日5分でいいので、今日の自分の行動を客観的に振り返る時間を持つこと。これは、次の日に向けた自分のリセットにもなります。よろしければぜひ試してみてください。JTBの改革も私自身の志もまだまだ道半ばです。大変なことも多いですが、それはすべてポジティブに捉えて、自らを客観視しながら、大切に一歩一歩歩んでいきたいと思っています。皆様、ともに頑張ってまいりましょう。

文=辻村洋子 撮影=小林久井

髙﨑 邦子(たかさき・くにこ)
JTB 人事部 執行役員 働き方改革・ダイバーシティ推進担当

関西学院大学法学部を卒業後、1986年に日本交通公社入社。97年に管理職初登用。2011年、JTB西日本本社広報室長に就任。14年に同社CSR推進部長。16年、同社教育旅行神戸支店長。18年より現職。