将来価格が上がったときには有利

地金商や証券会社、銀行で扱っている純金積立なら毎月1000円から積み立てが可能。貯まった資金はいつでも金製品と交換できる。毎月定額で積み立てると購入単価を平均化する効果がある。価格が高いときには少なく、安いときにはたくさん買うことになるからだ。今後価格が下がったとしても、その分、多く買うことができるので、将来価格が上がったときには有利になる。

「金は持っていても金利がつきませんが、資産を守る効果はあります」(藤巻さん)

不動産も金と同じ現物資産、インフレに強いという特徴がある。問題は価格がすでに上昇していること。国土交通省の公示価格によると、18年時点では前年比で5%以上上昇したのは、東京23区で港区、品川区など6区だったが、19年には12区に広がっている。人件費や原材料費が上昇しているのも不動産価格を押し上げている要因だ。

「その意味で不動産は買い時とは言えませんが、マイホームなら別。今は金利が低いですから、買ってもいいと思いますね」(深野さん)

金融機関と住宅金融支援機構が提携して貸し出している住宅ローン「フラット35」の最低金利は、19年12月時点で年1.210%(返済期間21年以上、融資率9割以下の場合)。35年の固定金利でメリットが大きい。

「将来インフレになれば、ローンは逆に有利になります」(藤巻さん)

インフレになると現金の価値が目減りすると同時にローンの価値も目減りする。物価が上昇すれば給料も上がるので返済はラクになる。

マイホームでなければ、投資信託で不動産に投資する方法もある。J-REITはオフィスビルや商業施設、住宅などに投資して家賃収入などを投資家に分配する仕組み。少額から投資できるのがメリットだ。

17年に価格がブレイクして話題になった仮想通貨(暗号資産)。日本ではあまり浸透していないが、世界では広く利用されるようになっている。

「世界には銀行口座を持たない人が17億人いるといわれています。その人たちもネット環境さえあれば、仮想通貨で決済や送金ができるのです」(藤巻さん)

先進国ではほとんどの人が金融機関に口座を保有しているので、買い物の決済や送金に不自由はない。しかし、口座を持たない人も多い新興国では、決済や送金が自由にできない。そのような人たちが仮想通貨を利用するようになれば、人気はさらに高まるという。また、仮想通貨なら銀行よりも安い手数料で送金できるので、先進国でも利用が広がる可能性は高い。とはいえ、焦って仮想通貨を保有することはない。

「将来、万が一Xデーが来たときに、資産の避難先として仮想通貨を利用できるような準備をしておくことは必要です」(藤巻さん)

必要になってから口座を開設し、取引しようとしても、やり方を知っていないとすぐには難しいのだ。

「仕組みだけでも学んでおくといいでしょう」(深野さん)

実際、国内でも口座数は上昇している。まずは、その仕組みを知ることからはじめておこう。

藤巻健史(ふじまき・たけし)
経済評論家
三井信託銀行を経て米モルガン銀行(現JPモルガン・チェース)勤務。元日本代表兼東京支店長。同行会長から「伝説のディーラー」の称号を贈られる。その後2019年7月まで参議院議員を務めた。
 

深野康彦(ふかの・やすひこ)
ファイナンシャル・プランナー
ファイナンシャルリサーチ代表。投資、運用、資産形成などの分野に強く、セミナー講師、マネー誌や新聞へのコメント、執筆のほか、All Aboutなどでも情報を発信している。
 

イラスト=石山好宏 写真=iStock.com

向山 勇(むこうやま・いさむ)
ライター