施策開始1カ月後に谷間がくる

長時間労働が個人ではなく職場や上司に原因があり、簡単にはなくならない性質を持っているので、それを変えようと思えば、以上の4つの方法すべてを駆使し、あの手この手で対策を打ち出さなければうまくいきません。ただし外科手術は1回だけにすべきです。

私たちが調査した残業削減施策の実施期間と効果実感の関係から、施策開始時は効果実感が高いものの、それから1カ月後にかけて効果実感が落ち続け、底を打って再び上がってくることがわかりました(図表1)。外科手術は痛みを伴うだけに、1回、どんと施策を打って、あとは効果実感が戻ってくるまで待つのがセオリーです。

出典:「パーソル総合研究所・中原 淳 長時間労働に関する実態調査」

効果実感が下がる最初の1カ月間のうちに、「この方法は効果がないかも」「かえって生産性が悪くなった」と慌てて次の外科手術を施してうまくいきません。「何をやってもダメなんだな」と諦める気持ちが生じるだけです。

長時間労働の損を具体的な金額で示す

下から上司や組織を変えていくときに注意すべき点があります。それは長時間労働が経営にとっていかにマイナスになるかを具体的な数字で語ることです。経営層は数字を基にしないとジャッジができないからです。

たとえば長時間労働が離職の大きな原因となっているデータを示しながら、どのくらいの額の損を出しているかを説明します。一般に中途採用で人材会社に払う費用はその人の年収の3割です。1人250万~300万円かかるでしょう。年間10人が、長時間労働が嫌で辞めていれば、損害額は2500万~3000万円と多額です。

経営を突き詰めると、売り上げを高めることとコストを下げることが成すべきことです。働き方改革で売り上げがアップするかどうかはわかりませんから、コスト側である採用費用の削減から攻めるのが有効策なのです。

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