中国企業が出資する主な日本企業
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中国企業が出資する主な日本企業

では、買収側の中国企業は何を考えているのか――。10年7月に中国の繊維大手の山東如意科技集団と資本提携を結んだアパレル大手のレナウンのケースをとってみると、「戦略的提携なので、関係が『上下』ということはない。レナウンが中国市場を開拓する手伝いをして、互いに学び合う」(朝日新聞10年5月25日付)ことを中国側の見解とするのが、日本サイドの共通認識になっている。

実は、もう一方の中国サイドの認識が当事者の手によって示された興味深い記事が、今、私の手元にある。中国で発行されている隔週刊ビジネス誌「中国企業家」の10年18号が、中国企業の日本企業買収の実態を特集したのだ。「日本を指揮下に(日本)」という勇ましいタイトルの特集記事からは、日本ではあまり語られることのない彼らの本音が垣間見えてくる。

まず同特集では、「『失われた10年』とその後の金融危機を経て、多くの日本企業が外資の救済に頼らざるをえなくなり、資金の豊富な中国企業へ身売りすることになった」「長年かけてブランド価値を築き上げてきた日本企業は保守的で、融通がきかず、改革に消極的だが、中国企業はヤル気も経験もある創業者が経営しているので、日本企業を再び活性化することが可能だ」という上海奔騰企業集団董事長・劉建国氏のコメントを紹介しており、少々上から目線といえなくもない。

さらに、先の山東如意のレナウンへの出資の目的を「日本のソフトから学ぶため」として、(1)高級ブランドの確立とバリューチェーンの獲得、(2)細部にまで気を配る製造工程、(3)ハイテクと人間らしさの融合、(4)顧客がリードする販売体制、(5)新しい流行の発信が感じられるインスピレーション――という5つの具体的内容を紹介。そうしたメリットがあるからこそ「中日は補完し合える」関係にあり、その結果として停滞する日本経済の活性化にも貢献できるのだと解説する。

一見、同特集は「この合意はレナウン側の経営陣の若返りがなければありえなかった」と評価し、提携にいたる両者の話し合いを「家族会議」と美談のように描く。しかし、昨年7月に東京で行われた山東如意とレナウンの経営会議で、両者の間にすれ違いがあったことをうかがわせている。

レナウン側が最初に提示した黒字転換を4年後の14年とした目標設定について、山東如意側が11年に前倒しするよう強く説得。「不可能だと聞く耳を持たないレナウン経営陣に、再建にはプラス思考が必要だ」と鼓舞した結果、ようやく合意に至った経緯を知ると、中国側が互いの温度差を気にとめずに押し切ったという印象を受ける。

実際、アパレル業界で長く中国事業に携わる日本人ビジネスマンは「中国人と日本人の仕事に対する感性や考え方の違いは大きい。ビジネスのスピード感にもギャップがある。我々はバブル崩壊も知っているから慎重に物事を進めたい。しかし、彼らは常にアクセルを踏みっぱなしだ」と話す。

今年1月13日に発表されたレナウンの今2月期第3四半期の決算では、通期で5億円の経常赤字の見通しが示された。この数字は期初の予想と同じで、山東如意サイドが考えていたよりも買収効果が出ていないことを意味しているように思える。だとしたらそうした齟齬は、日本と中国のビジネスに対する考え方や習慣の違いが原因になっているのだろうか。