終活──この「人生の終わりに備える活動」の一番の“目的”とは何だろうか。各種調査によれば、圧倒的に多い回答は「家族に迷惑をかけないため」。納得の結果といえる。しかしだとすれば、考えるべきは“最期のとき”だけというわけにはいかないはずだ。

人生100年時代というと人ごとのように感じるかもしれないが、厚生労働省が公表している平均余命によれば、今の時代、男性のおよそ4人に1人、女性の2人に1人は90代まで生きる。家族や周りの人に迷惑をかけないためには、最期のときを迎えるまでの何十年にも及ぶ期間にこそ焦点をあてるべきだろう。

とはいえ、日々の忙しさにかまけ、老後の準備が進んでいないのが日本人の実態だ。「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(内閣府)の結果はなかなか興味深い。日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデンの60歳以上を対象にしたこの調査で「老後の生活費に対する備え」を尋ねたところ、「特に何もしていない」の割合が断トツで高かったのが日本人だ(日本42.7%、アメリカ20.9%、ドイツ26.1%、スウェーデン25.4%)。

では、現在の貯蓄や資産で十分かといえば、「十分だと思う」の割合は日本が10.4%で最下位である(アメリカ30.8%、ドイツ32.7%、スウェーデン29.0%)。今のままでは不安だが、特に準備をしていない。これが、日本の高齢者の大勢だ。お金の備えは一朝一夕にできるものではない。老後に向けた準備、終活を始めるのに早すぎることはないのである。

「平成27年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(内閣府)

約40年ぶりの相続法改正
住まい、介護などがポイント

一方、具体的に終活を進めるにあたっては、押さえておきたい直近の動きがある。「相続法」の改正だ。相続法とは民法の中の相続に関わる法律のことで、これが昨年7月、およそ40年ぶりに大きく改正された。

主な改正のポイントとして挙げられるのが、まず「『配偶者居住権』の創設」だ。これは簡単にいうと、残された配偶者が被相続人が所有していた建物に無償で居住できる権利のこと。例えばこれまで、夫が亡くなって、妻と子どもで遺産分割をすると、妻の住む家がなくなったり、妻が自宅を相続するとあまり現金を相続できないということがあった。配偶者居住権は、残された配偶者が安定して生活できることを目指した制度だ。

また今回の改正で、介護や看病に貢献した親族が金銭を請求できるようにもなった。例えば、妻が夫の両親の介護にあたったとしても、妻は相続人ではないため、これまでは遺産の分配を受けることができなかった。こうした不公平を解消するため、この場合であれば妻が自分の夫や義理の兄弟などの相続人に金銭を請求できるようになったのだ。

相続や資産に関係する制度、ルールは変化する。知らないことが大きなトラブルにもつながりかねない。自分も周囲も納得のいく終活を進めるには早めの準備と確かな知識、この二つがまずは基本になるだろう。