あこがれていた現場監督の仕事には就くことができたが、岡田さんは8年目に退職してしまう。

「早く仕事を覚えなくては」と焦るあまり、昼夜を問わず仕事のことで頭がいっぱいになり、心身ともに疲れてしまったのだ。その後は派遣会社に登録し、ハウスメーカーのCADオペレーターとして働いた。

やっぱり「現場」に、身を置いていたい

「最初は図面を引いて、それが形になるのが楽しかった。でも、方眼紙の中で部屋割りを考えていくだけで、実際に建てていく過程には立ち会えない。『ゼネコンだったら現場にも行けるのに』と何度も考えてしまって」

もう1度ゼネコンに戻ろうと、2度目の転職を決意したのが、32歳のとき。インターネットの募集広告で見つけた鹿島建設に入社。中部支店に配属された。

2つ目の現場で出会ったのが、のちにメンターのような存在になる中部支店建築部の建築工事部長、日比野彰さんだ。

「こういう現場所長になりたい、と心から思いました。工期が迫ってすごく忙しいときでも、誰に対しても、いつも笑顔で対応して、どんと構えている。それに、女性の私を特別扱いすることもなかった。男性社員と同じように夜間作業を担当するように言われたときは、うれしかったですね」

とはいえ、技術職として現場に出る女性社員はまだ少ない。岡田さんも新人時代、心を開いてくれない協力会社の職人に悩んでいた。

「私たちがよく接するのは、職長さんと呼ばれる協力会社のリーダですが、女性の現場監督に慣れていない人だと、目を合わせてくれなかったり、わざと大声でどなることもある。『そこにある資材をどけておけ!』と言ってくる人もいましたね」

そんなとき岡田さんは、「えーっ。そんなのヤダ!」と笑顔で言い返し、ケムに巻いてしまうという。ぎくしゃくするのは、相手が女性の現場監督とのコミュニケーションに慣れていないだけ。それなら、こちらから打ち解けていけばいい――。これは最初のゼネコンで学んだことだ。

「私はもともと、女性らしいタイプではないので、そういうやつだとわかれば、相手も安心します。『いいものをつくりたい』という思いは職人さんたちも同じなので、その気持ちをきちんと共有するようにしています」

日々の朝礼も、現場監督の大事な仕事だ。

「その日の工程の説明や注意事項を、いかにわかりやすく説明するかが大事なんです。ダラダラ話をしても聞いてもらえないので、短く簡潔に。ときにはちょっと笑えるネタを仕込んでいます」