間合いをとるコツは、相手の息を読むこと

「あの人は感じがいい」「すごく話しやすい」と言われる人がいます。こうした、いわゆる好感度の高い人とそうでない人の違いは何だと思いますか? それは“間合い”です。

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「話すのは上手だけど自分の話ばかりで、こちらの話を聞いていない」、あるいは「よく聞いてくれるけれど、自分の意見をあまり言わない」という“話す”“聞く”のどちらかひとつだけというような人は、決してコミュニケーション上手とは言えません。本物のコミュニケーション上手は、話すのも聞くのもうまい、間合い上手な人なのです。

コミュニケーションは「もちつき」のようなものです。もちつきでは2人がきねを持ち、もちをぺったんぺったんとつきますよね。互いのきねがぶつからないように注意しなければなりません。その合間に、もちをひっくり返す人がいます。この人も手を打たれないように絶妙なタイミングで入らねばなりません。もちつきでは全員が掛け声をかけながら、相手の息を読んでいるわけです。会話も、このもちつきのように“相手の息を読む”ことが大切なのです。

アナウンサーの仕事のひとつにインタビューがあります。相手は必ずしもしゃべることに慣れている芸能人や文化人ばかりではありません。しゃべり慣れていない一般の方もおられます。私がアナウンスの仕事をしていたときは、このように話すことが得意ではない方々のインタビューでは、相手の息をひたすら読むようにしていました。たとえば相手が、話の長い方だとします。話にまとまりがないうえ、本来質問した内容と、どんどんずれた方向に話が飛んでしまうこともあります。そんなとき、アナウンサーはゲストの息を読みます。どんなに話が長い方でも、どこかで必ず息継ぎをします。そのタイミングで、こちらは「なるほど」などと言葉を挟み、間合いをとります。もし上司など周りに話の長い人がいるなら、同じテクニックが使えます。まず相手がどこで息を吸っているか観察してみましょう。そして、息を吸ったところで「わかりました」などとあいづちを打つ。そうすると、こちらが話の流れをコントロールできます。うまく間合いをとることで、長い話も止めることができるのです。反対に自分の意見を聞いてもらおう、話の主導権を奪おうとあいづちをたくさん打とうとするようなとき、相手の息を読んでいないと間合いが悪くなってしまうので注意が必要です。

一方、なかなかしゃべってくれない人もいます。これは、いわば我慢比べです。たとえばあなたが何か質問をして、相手がずっとしゃべらずにいると間ができますよね。それでしびれを切らして、ついこちらが答えを言ってしまうことがありませんか。けれども、あと一息待っていれば、相手が答えを言ったかもしれない。これはビジネスの場でもよくあります。たとえば社外で企画提案をするような交渉の場面です。もう一息待てば、よい返事が得られたかもしれないのに「もし○○という点がご心配なのであれば……」「他社の例では……」と次々に言葉を重ねてしまうため、相手に煙たがられて「もういいよ」となってしまうのです。

なぜ間をとれないかというと、間をとるのがこわいからです。間とは黙るということです。そのためしゃべるときにしても聞くときにしても、間ができると沈黙して気詰まりな空気が流れてしまいます。この何ともいえない嫌な雰囲気が苦手という方が多いのです。そんなときの救世主が非言語・ノンバーバルの行動です。無言の時間にも意味があることを非言語で示せば、こわくないのです。

たとえば相手が黙って答えを考えている間、あなたはノートを広げて待つ。「今からメモをとります」と言わんばかりにニコニコして黙ったまま待つのです。上司ならペンをかまえて「ぜひ勉強させてください」という積極的な態度をしていればOK。ただし、待っているときの姿勢は重要です。気をつけの姿勢で直立していれば緊張しているように見えますし、うつむき加減や目が泳ぐという状態なら困っているように見えます。あくまでも「あなたが話しだすのを待っています」というメッセージを伝えられる体勢で待つことが自然です。