日本から最も近いヨーロッパ 憧れの地・北欧へ

つかの間の休日、ぜひ訪れてほしいのが、北欧フィンランドである。北欧は遠いというイメージを持っている人も多いかもしれないが、フィンエアーのヘルシンキ経由便なら、成田からたった9時間でヘルシンキにつく。さらに、乗り換え1回でラップランドに到達できる。そこには、特等の非日常が待っているのだ。

「いつか自分の目でオーロラを見てみたい」と思ったことはないだろうか。フィンランド北部のラップランド地方は、北緯約65~70度に沿った「オーロラベルト」と呼ばれるエリアにすっぽり収まるため、多くの街でオーロラを観測することができる。

今回は手軽な旅をしようと、防寒対策の重装備が必要な真冬のシーズンを避け、秋に2泊4日のオーロラハンティング旅行を計画した。もっともラップランド地方では近年、ガラス張りの「イグルー」という宿泊施設の整備が各地で進んでいるので、極寒の季節でも問題ない。屋外でこごえながら何時間も過ごすのではなく、ベッドに寝そべってのんびり「大空の奇跡」の出現を待つ。そんな優雅でぜいたくな鑑賞スタイルも可能になっている。

日本でも今年9月の初旬に、太陽フレアが大爆発して普段より活発なオーロラが観測されたというニュースが新聞やテレビで報じられた。オーロラ発生に関わりの深い太陽活動が活発化していることで、NASA(アメリカ航空宇宙局)は「これからの何年間かはオーロラ出現率の高い時期が続く」、つまりオーロラのハイシーズンが来るとの予測を発表した。

今回宿泊したのは、キッティラ空港からクルマで1時間、スウェーデンとの国境に近いトラシエッピ湖のほとりにあるコテージだ。一部がビニール張りになったドームテント型の宿泊施設もある。ラップランド地方は9月初旬に森の木々が紅葉し、毎年10月には初雪を観測。11月も終わりになると一面が雪で覆われはじめる。私が訪ねたときは、雪はまだ降っていなかったものの、日没後は気温が一気に低下。地元の人たちとキャンプファイヤーで暖をとりながら三脚にカメラ機材をセットして待つことにした。

夜の10時を回ったときだった。オーロラを撮り続けている地元の写真家、アンティ・ピエッティカイネンさんが「始まったよ」と対岸の空を指さす。月明かりの影響で周囲はまだ明るく、私にはただの白い雲のようにしか見えない。「写真を撮ってみて」と言われて、シャッターを数回押した。ISO感度を上げて、絞り値は開放に。シャッタースピードを何段階かに分けて撮ってみると、彼の指さしたあたりが淡い緑色のカーテンのように写った。周囲の暗さが増すにつれてしだいに肉眼でも確認できるようになり、神秘の天体ショーは午前2時過ぎまで繰り広げられた。