「『どうしてできないの?』と、子どもをしかっても問題行動は解決しません」。発達障がいの専門家で、精神科医の西脇俊二氏はそう言います。「ちゃんとしなさい」ではダメ。それでは具体的にどう伝えればいいのか。子どもとのコミュニケーションをとるうえで、親が意識するべきポイントを解説します――。

※以下は、西脇俊二『発達障がいの「子どもの気持ち」に寄り添う育て方』(日本実業出版社)より一部を再編集したものです。

怒る、しかる教育は、まるで意味がない

厳しいことをいうようですが、親や先生が子どもの言動に対して、怒ったり、しかったりすることは、まるで意味がありません。

なぜなら、怒る教育というのは「大人が強い」という力関係によって成り立っているからです。また、子どもに力関係でものごとを教えると、力関係でものごとを考えて、解決しようとする人になります。

『発達障がいの「子どもの気持ち」に寄り添う育て方』(西脇俊二著・日本実業出版社刊)

たとえば、「叩かれて育った子は叩くようになる」などは典型的なケースです。基本的に、親が子どもを「怒る・しかる」のは、子どもが困った行動を取るときです。つまり、子どもの困った行動は、「親が正しい行動を教えていなかったから」ともいえます。

一般的に、日本の親は子どもを「怒る・しかる」という方法で育てる傾向にあります。その場しのぎで子どもをしかっても、子どもは理解できていないので、同じ問題が起きるたびに、何度も同じ行動を繰り返し、結局、問題は解決されません。

特に、発達障がいの子どもは、ガミガミと親にいわれることで、「対人緊張」を起こしやすいです。対人緊張は、常に不安と緊張にさらされている状態なので、子どもに何かの刺激が加わると、とたんにパニックを起こします。

子どもがわかる基準で教える

そもそも、発達障がいの子どもは「やらない」のではなく、「できない」のです。子どもの困った行動を減らすには、怒る・しかるではなく、子どものレベルでも理解できる方法で教えていきましょう。

その際、一番大事なのは、親のレベルにあわせて教えるのではなく、子どものレベルにあわせて教えていくことです。そして、子どもが「やりたい」と思えるように、子どもの興味をひく工夫をして、教えることが大切です。

また、声かけも「ちゃんとしなさい」ではなく、「◯◯を△△に置こうね」などと、親は子どもがわかる具体的な表現で手順を伝えるように心掛けていきましょう。