高い不支持率は下がらない

ウオッチャーたちは、支持率の低下より不支持率の高さに注目する。支持率は政権内で起きた不祥事や政策決定の評価によって、乱高下する。「支持」と「どちらとも言えない」の間はかなり流動的だ。

ただし不支持率は、あまり動かない。「いったん嫌いになってしまうと好きには戻らない」という恋愛論に近いといえば、理解してもらいやすいだろうか……。不支持率が5割に近づいてしまった今、内閣が再生するのは、かなり難しい。

「政党支持>内閣支持」で政権に遠心力

今回の調査では、内閣支持率が暴落したが、自民党の支持率は30%程度を維持している。NNNの調査では、党の支持率が内閣の支持率を上回っている。党の支持率が高いのは、政権にとって好ましいデータのように思われがちだが、そう簡単な話ではない。むしろ安倍首相にとっては「不都合な真実」だ。

7月10日、安倍内閣の支持率について報じる新聞各紙。

内閣支持率が党の支持率よりも高ければ、党所属議員は「首相の人気のおかげで自分たちは当選できる」という空気が広がり、政権の求心力が高まる。これまで安倍政権では内閣支持率が党の支持を上回ってきた。ところが、逆に内閣の支持が党の支持を下回ることになったらどうなるか。「首相の不人気は自分たちの選挙にはお荷物だ」となり、求心力は遠心力に変わる。今の数値は、その瀬戸際にある。

留意しなければならないのは、今回のデータが都議選から約1週間後に行われていることだ。自民党が惨敗した余韻が残る中で、国民は、あらためて安倍政権に「ノー」を突きつけた。

つまり国民は、都議選の結果を「自民党が負けすぎた」とは思っていない。都民の決断に賛同し、自分たちも同じ1票を投じるつもりで世論調査に応じたのだろう。都民の怒りが全国に伝播したのだ。

昭和と比べ、「内閣支持」は高くて当たり前

ここまで書くと「支持率30%台はそんなに低いのか。もっと低いこともあったではないか。少し大げさだ」と思う人もいることだろう。確かに昭和から平成初期のころは内閣支持率は4割あれば上等。3割台は普通。もっと低いこともざらにあった。1989年(平成元年)、消費税が導入され、大疑獄事件・リクルート疑惑が吹き荒れた時、ある新聞社の調査では竹下登内閣(当時)の支持率は3%まで落ちたことがある。消費税率は当時3%だったため「消費税と同じ支持率」と、皮肉られたものだ。その時と比べれば、安倍内閣の支持は10倍ある。