企画書が売りものであり武器だという女性役員、一日に何十もの決裁文書に目を通す経営者……。彼らが評価する資料の基準とは?
アクセンチュア・執行役員 堀江章子●1993年慶應義塾大学法学部政治学科卒業、アクセンチュア入社。95年コンサルタント、99年マネジャー、2007年マネジング・ディレクター(MD)に昇格。14年 インクルージョン&ダイバーシティ統括 執行役員に就任。

私が資料を見るときのポイントは3つあります。まずは「目的に合っているかどうか」。その資料は提案なのか、報告なのか、どんな議論をするためのものなのか、目的に合った内容がダイレクトに表現できているか見ます。ですから部下から資料を受け取ったらまず、何のための資料なのかを聞きます。資料単体で見るとよくできていても、目的とずれていたら意味がありません。

次は、構成のわかりやすさです。目的に合った内容が、シンプルで説得力のある流れで表現されているか。読み手が途中、資料の中で迷子になってはいけません。何をどのような順番でどう表現すると読み手に伝わり、目的を達成できるのかをしっかり練られている資料は構成もすっきりしています。

3点目は、適正な表現方法やメディアが使われているかどうか。図で描かれるよりも、シンプルなテキストのほうが、意図が伝わる場合もありますし、逆もありうる。グラフやイラスト、動画など、選択肢はたくさんあるので、内容に合ったものを選ぶ必要があります。特にデジタル化時代においては、提案したい商品やシステムのモックアップ(試作品)などを見せるほうが、わかりやすいというケースもあります。

アイデアが生煮えで、あまり練られていない資料は、思いついたことを盛り込んでいるだけなので情報量も多く、見た目もにぎやかすぎるものが多いように思います。一方、よく考えて練られた資料は、情報が整理されていて余計なものがなく、表現もシンプルにまとまっている気がしますね。

資料は、いきなり書き始めたりせず、まず構成を考えます。「ここで結論を示し、ここで論拠を説明し、データをここで入れて……」といった、説明する相手が意思決定するために知りたいことや、求めている情報は何かという視点で、まずはストーリーを組み立てるのです。

コンサルティングという仕事では、お客さまに、目に見えない「サービス」を説明しなくてはなりません。資料はそのための、もっとも重要なツール。ただお客さまの興味をあおるだけでなく、私たちを信頼して仕事を任せるという重要な決断をしてもらうためのものです。しっかりとした裏付けや根拠を伴った、わかりやすくて説得力のある資料が不可欠です。

▼良い資料の条件
1. 目的に合っている
2. 内容に合った手段を使っている
3. ストーリーがある


よく考えて練られた資料ほど、シンプルにまとまっている。そしてシンプルななかで、これらの条件がしっかり押さえられている。

構成=大井明子 撮影=貝塚純一