全国の工場や倉庫、作業所などの建築において、着実にシェアを伸ばしているyess建築。それを支える地域密着の事業体制や独自の技術力、自社専用工場とはどのようなものか──。

独自のビルダー制で地域密着の事業を展開

大島輝彦(おおしま・てるひこ)
株式会社横河システム建築
代表取締役社長

「今は業種、業態を問わず、スピードが求められる時代。工場や倉庫、店舗などを建てる場合も、投資資金をいかに早く回収するかが重視されます。そのため、品質の高さやコスト削減に加え、工期短縮も大事な要件となっています。建築業界の人手不足が深刻化する中、そうしたニーズに応えるうえで、当社のシステム建築ブランド『yess建築(Yokogawa Engineered Structure System:イエス建築)』がお役に立てる場面はさらに増えていくと考えています」

そう語るのは、横河システム建築の代表取締役社長を務める大島輝彦氏だ。システム建築では、部材を標準化し、建築の一連の流れをシステム化することによって、高品質と短納期・低コストを実現する。同社は29年の歴史を持つシステム建築のリーディングカンパニーである。

「yess建築では、設計や見積もりの作成から施工、アフターサービスまでを一貫してシステム化することで、最大60メートルスパンの無柱空間を短い工期で提供します。デザイン性にも優れ、設計の自由度は高い。これまでに、工場や倉庫、物流施設はもちろん、ライブシアター、3000人収容のアリーナなど、およそ7700棟を送り出してきました」


着工面積が伸びる中でも、yess建築は着実にシェアを拡大している。

ビルダーと呼ばれる各地の販売・施工代理店を通じたきめ細かな対応も同社の特徴だ。自社では元請けを行わず、設計と部材製作ならび現場建方に集中。各地で販売と施工を行うビルダーへ充実したサポートを行うことにより、地域に密着したサービスを提供している。

「北海道から沖縄まで、約920社のビルダーが、ご相談、お見積もりに始まり、施工、メンテナンス、さらに増築や改修まで、丁寧にご要望にお応えしていきます」

「yess見積3Dシステム」は、建物の完成イメージ図を具体的な三次元パースで提案することが可能。

商品の参考価格や施工実績、各地のビルダー一覧などを掲載するウェブサイト「yessビルダーズネット(YBN)」では、誰もが簡単に建物のイメージや参考価格を確認できる。また横河システム建築が全ビルダーに、三次元パース、図面、見積書を素早く作成できる「yess見積3Dシステム」を提供することで、施主に具体的でわかりやすい提案を素早く行える仕組みも整備している。

国内唯一の専用工場から高品質の部材を安定供給

創業以来培ってきた鉄の加工技術も、同社の大きな強みだ。鉄骨フレームなどの基本部材をシステム建築専用の自社工場で生産。これが品質確保やコスト削減、工期短縮にプラスに働く。日本でシステム建築専用の自社工場を持つ企業はほかにないという。

「鉄骨には超高層ビルや橋梁などに使われる高張力鋼を採用。力のかかる部分は太く、そうでない部分はスリム化することにより、在来工法から30~40%の軽量化を実現しました。それにより建設コストは下がり、耐震性が向上し基礎への負担も軽減されます。加えて、専用工場には常時2~3カ月分の材料をストックしており、高品質の部材を安定的に供給できる点も当社のアドバンテージだと考えています」

この自社工場での生産や、先の見積もりシステムの効果により、yess建築では契約後約45~60日で建物の施工を開始できる。

一方同社では、独自の技術を生かして、多彩な目的に即した付加価値の高い建物づくりも行っている。

「プールやスポーツ施設などの開閉式屋根をはじめとした可動構造建築は全国で150以上の施工実績があり、最大で48メートル×16メートルの開口部がとれる大型可動式扉『タイタンドア』は、造船ドックや航空機の格納庫などにもご利用いただいています。また、長年の実績がある太陽光発電システムとyess建築を組み合わせたご提案も可能です」

施工では全国に約100社の現場施工会社(エレクター)と契約。鉄骨や板金の職人を育成する「エレクター制度」による人材育成もあわせ、態勢強化と人材確保を図っている。

yess建築の施工事例
設計の自由度は高く、デザイン性のある建物にも対応するyess建築。左はスーパーマーケットのフレイン下郡店(大分県)。右は4234平方メートルの広さを持つ東海ワークスの物流センター(愛知県)で屋上には太陽光パネルを搭載している。

質の高い建築によって企業の課題解決をサポート

横河システム建築では、「社会公共への奉仕と健全経営」を基本理念に掲げる横河ブリッジホールディングスの一員として、事業運営における「地域への貢献」を重視している。

「各地のビルダーと連携しながら、質の高い建物を、地域に根ざしたサービスとともに提供することで、全国の中堅・中小企業をサポートしていければと考えています。例えば、現在の本拠地とは異なるエリアに新たな生産や物流の拠点をつくりたいという方にも、各地に広がる当社のビルダーのネットワークを生かして対応いたします」

都市部での建築需要の高まりに加え、老朽化した建物のリニューアル、生産性向上のための工場の建て替え需要なども堅調な今、システム建築への期待はさらに高まっている。そうした中で、最後に大島社長は次のように言う。

「引き続き商品開発に力を入れ、建築にかかわるご要望に一つ一つ的確にお応えしていくことが私たちの使命。それにより、yess建築が工場や倉庫の建築の『デファクトスタンダード』となることを目指しています。実現に向けて、今後もより多くのお客様の“課題解決”のお役に立ちたい。そう考えています」