フリーランスのしんどさを緩和する仕組み

【中野】労働法を勉強していると、インターネットを通じて働いている人は労使交渉の場もないし、家内労働法の対象にもならず、価格交渉上不利な立場にある。フリーランスの人が生きていくためには、単価が下がらないことがとても重要だと思います。

【秋好】そうですね。インターネットがあればどこでも働けて、かつ、高額の仕事がいっぱいあるという世界が理想だと思うんですね。ただ、私が2008年に国内初のクラウドソーシングプラットフォームとしてランサーズをつくったときに、まずは、ステップ1として、インターネットで仕事がマッチングしてなかったところを、マッチングさせる必要があると考えました。ステップ2は単価を上げる。最後が、単価が自動的に上がっていくという世界。最初は、市場取引なので、価格は適正に落ち着くと思ってたんです。でも実際は、学生でロゴの作制なら500円でもやりたいという人が出てきて、相場が引っ張られてしまう。そこで、09年に、最低金額を設定しました。苦渋の思いで。依頼件数は下がるとわかっていたのですが、予想どおり10分の1になりました。そこから2年ぐらいは苦しみましたが、徐々にその相場でもマッチングして価値があると思ってくれる方が出てきました。

あとは我々がいったん営業として間に入り、企業に向き合うと、適切な単価になる面もあります。また、最近ランサーズストアというサービスを始めました。通常、お金を払うほうが有利なので、価格交渉はどうしても値下げ交渉になる。そのため、個人が、「私はこれをします。金額はいくらです」と決めて、それを企業がECのように買う仕組みを作りました。

【中野】国としてフリーランスの人たちを保護すべき点はありますか? 私はいま、厚生労働省の「働き方の未来2035懇談会」のメンバーを務めているのですが、この会議で「労働者」という定義が非常に狭く、フリーランスの人などがカバーされていない政策や制度が多いことが議論にあがっています。

【秋好】年金と健康保険はフリーでも入れます。おそらく一番不安なのは、雇用保険の領域ですよね。

【中野】育休給付金などは雇用保険なので、雇用されていなければ受給できない。フリーだと保育園に入りにくい、保育園に入れないから仕事が進まない、でも給付金はもらえない。フリーランスの場合「失業している」という状態が定義しにくいわけですが、一定のクライアントと継続的に仕事をしているケースは救済策があってもいいのかも。

【秋好】我々も会社として、組合をつくって積み立てることはできます。たとえば認定ランサー限定とかで、病気になったら3カ月間は払いますといった仕組みはできるはずです。いま、ランサーズでは一定金額以上稼いだ方には、健康診断やゴルフ場を安く使えるなどの福利厚生の提供はしています。万が一、トラブルがあったときの賠償も。あとは税金ですかね。確定申告の精神的な負担がすごく大きいので、楽になるといいのですが。

【中野】いままでは企業が、終身雇用でさまざまな手続きを代わりにやってくれたり、教育したりしてきたわけですが、これからは働き手がどこで基本的な知識を身に付け、スキルを得るかということも課題になりそうですね。

秋好陽介
1981年大阪府出身。大学卒業後、ニフティに入社。インターネットサービスの企画・開発を担当。2008年リート(現・ランサーズ)創業。インターネットを通じて働きたい個人と、仕事を依頼したい法人のマッチングをするクラウドソーシングのパイオニア。
中野円佳
1984年生まれ。2007年東京大学教育学部卒、日本経済新聞社入社。14年、育休中に立命館大学大学院にて提出した修士論文を『「育休世代」のジレンマ』として出版。15年より企業変革パートナーのChangeWAVEに参画。東京大学大学院に通う傍ら、発信・研究などを手掛ける。

中野円佳=構成 岡村隆広=撮影