予想できない出来事が起き、市場を揺るがした2016年。この1年を振り返りながら、2017年に注目すべき動きを考えてみたい。

キーワード 1
席巻する欧米ポピュリズム

2016年の一つのテーマが、欧米ポピュリズムの台頭であったことは間違いない。生活の不安、国や特権階級への怒りが社会のムードになっている。その象徴ともいえるのが、米国大統領選挙で過激な発言を繰り返して勝利したドナルド・トランプ氏だろう。反移民、反イスラムなどを掲げてきたトランプ氏だが、当選した後は態度を軟化させた。そんなトランプ氏の“変節”に為替や株価が反応し「トランプ・ショック」としてニュースを賑わせている。

しかしショックはあくまでも一過性のものだ。大統領に就任した後の舵取りにこそ、その真価が問われる。トランプ氏は空調機器メーカーの生産拠点の海外移転に介入し、「米国を離れれば高関税をかける」などと発言しており、保護主義の兆候が現れている。

米企業の海外移転を阻止し、TPPからも離脱し、メイド・イン・アメリカ製品を海外に輸出することで「偉大な米国」の復活を目指す──このシナリオにこだわるなら、トランプ氏がクリアすべき壁は高い。人件費高騰などは米企業にとって重荷になるし、関税を引き上げれば国内物価の上昇は避けられないだろう。また、輸出には不利に働く米ドル上昇も歓迎できない。米国中央銀行の連邦準備制度理事会(FRB)は景気回復を背景に1年ぶりの利上げを実行する方針だが、今後の為替政策への対応にも注目が集まる。

キーワード 2
変わる欧州のリーダー

一方、太西洋を挟んで反対側の欧州でも、世界最大の自由貿易圏であるEUが大きな岐路に立たされている。

2016年6月、英国は国民投票でEUからの離脱を選択し、金融市場に混乱をもたらした。国民投票後に英ポンドは急落し、英国内ですら早まった選択ではないかとの声も上がったほどだ。メイ英首相はEU離脱交渉手続きを2017年の第1四半期のうちに始めるという方針を示し、EU域内での関税障壁をどうクリアするのかという課題に直面している。「2017年3月末」が一つのターニングポイントとなるだろう。

さらに2017年は欧州ではオランダ、ドイツなどでも重要選挙が予定されており、その動向が注目される。とりわけ4月から5月にかけて実施されるフランスの大統領選は、今後の欧州の方向性を占う試金石となりそうだ。現在は中道右派の共和党が優勢だが、右翼の国民戦線も勢力を拡大している。米国や英国で起きた選挙結果を踏まえるならば、「まさか」という結果が起きても決して不思議ではない。2017年は自由貿易を推進してきた二つの地域が変貌する年となるかもしれない。

キーワード 3
「IoT・AI」の時代へ

この流れの中で、日本も教科書どおりの対応では立ちゆかなくなることは明らか。生き抜いていくには、課題を真っ向から見つめ直し、新たな成長分野を生み出さなければならない。

日本の課題はやはり、少子高齢化と、増大する社会保障費への処方箋を見出すことにほかならないだろう。超高齢化時代において、対応は待ったなし。すでに消費増税や年金受給費の引き下げ、医療費の自己負担増などが議論されているが、支出を削るだけでは限界がある。ジリ貧となる前に、収入を伸ばす取り組みにも力を入れるべきだ。

起爆剤となりうるのが、インターネットやセンサー、人工知能(AI)などを活用したイノベーションである。国は2017年度の経済政策の重点分野として、IoTやAI、ビッグデータなどを活用した第4次産業革命のさらなる拡大を掲げている。特にAI分野は、かつて日本が研究開発において世界トップを走っていた領域だ。今ではドイツなど欧米企業に水をあけられているが、自動走行や農業、医療、金融サービス分野などにはまだ伸びしろがある。国ではこうした分野でのAIやIoTの実装に向けて規制改革を進めるとともに、目標を設定している。

例えば日本再興戦略では中小企業へのロボット導入を促進するため、2020年までに小型汎用ロボットの導入コストを2割以上削減し、さらに導入を支援する人材を5年で倍増させるという目標も掲げている。また、「空の産業革命」と呼ばれるドローンの実用化、金融とITを融合させたフィンテックの推進など多岐にわたる。日本ならではのより革新的なサービスや技術を生み出すことも、十分に可能だろう。個人の生活レベルでも、インターネットやクラウドは浸透が深まる。市民にとっても、新たなツールを使いこなすモラルと知識も必要になる。

世界経済の不確実性はいっそう増している。その危機や変化の中にこそ、閉塞感を打ち破るカギがあるはずだ。