政治主導の実現、行政のスリム化、構造改革……。はたと気づけば、かけ声は変わっていない。なぜ「改革」は進まないのか。その恩恵を受けているのは誰なのか──。
兵庫県小野市。加西市に隣接し、市長も同じく民間出身だ。人口は約5万人と加西市より3000人ほど多いが、市職員のうち正職員は290人、臨時職員は172人(病院と消防を除く)と、いずれも加西市より少ない。プレジデント誌推計では、平均年収は691万円と、全国平均より約60万円、加西市より約50万円高い。ただし総人件費は30億円で、加西市より3億円少ない。蓬莱務市長はいう。
「どうやって職員を味方にして、公僕たる使命感をもってもらうか。ただでさえ公務員はバッシングされている。公務員制度改革は10年以上も成果が出ていません。給与カットのような『政治ショー』を続けても、市民は『またか』と思うだけ。マスコミの責任も重いと思いますよ」
蓬莱市長は99年、前市長が汚職で退任したことから市長選に立候補し当選。03年と07年はいずれも無投票で再選され、現在3期目。市長になるまでは自動車部品会社のサラリーマンだった。
「キーワードは『行政も経営』。より高度で、高品質なサービスを、いかに低コストで提供するか。ただし何でも『官から民へ』ではよくならない。官と民の違いを明確化させることが、必要なんです」
就任と同時に「本来の意味でのリストラクチャリング(再構築)」に取り組んだ。理屈にあわない手当は全廃。職員互助会への補助金も全国の市町村に先駆けて全廃した。残業手当を削るために、職員の超過勤務時間を掲示したこともある。ただし一律での給与カットはしない。非正規職員では、年収230万円以上になるよう待遇を改善した。
人事では5年以上、同じ仕事を続けないようにローテーション制を敷く。長くいたことではなく、何をしたかを評価する。年齢や経験にかかわらず、成果を出した人が評価される仕組みだという。