今年の9月にスタートする新しいドメイン「.shop」。じつは日本の企業が世界最高額(※1)で落札したものだ。ひと目で「お店」や「お店のサイト」だとわかる潜在価値ナンバーワンの新ドメインについて、世界のドメイン事情とあわせてご紹介しよう。

インターネット上の住所に相当する「ドメイン」。例えば、プレジデントオンラインのドメインは「president.jp」。このうち「.jp」に当たる部分を「トップレベルドメイン(Top Level Domain、以下「TLD」)」と呼ぶ。「.jp」のほか、「.com」「.net」などがお馴染みだ。さらに近年は、「.tokyo」や「.xyz」といった新しいTLDが次々と登場していることにお気付きだろうか。

TLDは、「.jp」をはじめとする国や地域別のTLD(ccTLD)と、「.com」などの一般TLD(Generic Top Level Domain、以下「gTLD」)に分けられる。このうち「gTLD」は、かつて22種類に限定されていた。これが、2012年になって大幅に自由化されたのだ。

長く使われてきた「.com」には、すでに膨大なドメイン名が存在しており、これからドメイン名をつくろうとしても、思いどおりの名前で登録するのは極めて困難。しかし、新しい「gTLD」ができれば、そこにはまだ誰も印を付けていない、まっさらな地図が生まれる。

なかでも2016年9月にスタートする「.shop」は、世界で最も注目度の高い新gTLDだ。

新ドメイン中No.1の潜在価値を誇る「.shop」

新gTLD潜在価値評価結果TOP10

全世界で使われるドメインやIPアドレスは、アメリカに本拠を置く非営利団体ICANNによって調整、管理されている。新しいgTLDを運営するためには、まずICANNが実施する新ドメイン導入プログラムに申請しなければならない。その上で、同じ文字列の申請が複数あった場合は、オークションで運営権を競うことになる。

「.shop」を申請したのは、日本のGMOドメインレジストリをはじめ、欧米、中国、中東などから全8社。2016年1月に行われたオークションでは、AmazonやGoogleと競合の末、GMOドメインレジストリが当時世界最高額の約49.2億円で落札した。

「.shop」が持つ潜在価値は、2,000件ほど申請された新gTLDの中でもナンバーワンと評価されている。これは、ドメインを売買する大手企業Sedo GmbH社が、事前受付数やGoogleグローバル検索数、「.com」との後方一致文字列など、5つの評価基準にもとづいてランク付けしたものだ。(sedo「Top Ten New gTLDs: Value Analysis」)

現に、一般提供と分別して価格が設定・販売されるプレミアムドメインは「car.shop」が1,320万円、「food.shop」が660万円、「flower.shop」が132万円と高額を付けている。

人気の理由は、用途が明確で覚えやすいこと。ドメイン名に「.shop」が付いていれば、そのサイトが「お店」や「お店のサイト」のものだとすぐ分かる。eコマースはもちろん、実店舗のホームページにもうってつけだ。

ドメイン名は、URLだけでなくメールアドレスにも利用するなど露出が多く、ユーザーの目に触れる機会が多い。ブランドや商品、店舗名に直結する、シンプルで分かりやすいドメイン名が取得できれば、認知度やアクセス回数の向上が期待できる。チラシや雑誌広告などの印刷媒体からホームページへの誘導も、ぐっとたやすくなるはずだ。

世界市場でのブランド確立にはドメイン名が最重要

日本人はドメイン名をタイプするよりも、検索エンジンを通じてサイトにアクセスすることが多いため、ドメイン名に対する認識が浅いといわれている。対して、欧米ではドメイン名を直接アドレスバーに入力してアクセスすることが日本より多く、サイト運営者にとっては、なるべく短く、覚えやすいドメイン名を獲得することが至上命題になっている。

なおかつ、商標は国ごとに設定されるのに対し、ドメイン名は全世界で一つだけ。ブランド価値を重視する欧米では、実際に使う予定がなくても、自社のブランド名を冠したあらゆるドメイン名をおさえるのが一般的になっている。偽サイトやフィッシングサイトなどから自社ブランドを保護することが目的だ。

「.shop」でも、Sony、Panasonic、CASIOなど(※2)は、商標権者向け優先登録の開始と同時に、いち早くドメイン名の申請を済ませている。特に、世界的なブランドを数多く保有するドイツやアメリカからの申し込みが多いそうだ。これら上位2カ国に比べ、日本のブランドからの申し込みは半数以下に留まっている(2016年8月9日時点)。グローバル市場におけるブランド価値向上やブランド保護の観点からも懸念されるところだ。


商標権者向け「.shop」申請状況/国別

国内はもちろんのこと、これから世界規模で販路を拡大していくためには、効果的なドメイン名が強力な武器になり、防御にもなる。せっかく日本で新しいgTLD「.shop」が誕生したからには、「.com」では使えなかった、希望通りの文字列を獲得したいところだ。

ドメイン名の登録は、原則として早いもの勝ち。短く使いやすい、価値の高い文字列からふさがっていく。まず、「お名前.com」でイメージするドメイン名を検索してみることをお薦めしたい。 

※1:2016年1月28日時点
※2:出典元「ICANN Centralized Zone Data Service」