仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、新刊『読書で自分を高める』が話題の作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、連載第17回は「スマホ中毒」に関するご相談です。

【今回のご相談】
スマホが手放せません。会社で仕事をしている時間以外はスマホ漬けです。LINEやSNSで友人知人との交流を楽しむわけではなく、ニュースサイトや掲示板をひたすら見ています。一人暮らしですが、食事はコンビニで買って済ませており、家事は洗濯など必要最低限のことだけしかしていません。このままではあらゆる意味でダメになってしまいそうと恐怖を感じますが、やめられません。どうしたらいいでしょうか。
スマホを忘れたときの心細さと言ったらありません。いつからこんなにスマホ頼りになってしまったのでしょうか。(イラスト=伊野孝行)

「10年前の普通」に立ち返り、世界の大きさを感じる

【河崎環さんの回答】

米国西海岸の天才たちは、(だいたい)世界中の人間の暮らしを本質的に変えてしまいました。スマホはその手の中で世界中の(だいたい)すべての情報に常時アクセスできる魔法の小箱であり、それは現実には「狭い部屋のコタツで、コンビニ飯を前にスマホを眺めたまま微動だにしなくても(だいたい)生きていける」という、恐るべき効率的な暮らしを可能にしてくれました。ええ、私も(だいたい)ご相談者と同じく、うっかり気を抜くとニュースサイトや掲示板を見つめ続けがちなスマホ廃人です。まして仕事が(だいたい)そっち側の世界なので、もう処置なしです。

しかし、先ほどから私がくどいほど「だいたい」と繰り返しているように、ネットに没頭しているとそこに書かれていることばかりが真実で万能と思い込みがちですが、世界は捨てたもんじゃなく、もっと広いし深い。自分の体を使って実際に見聞きし感じ味わう体験の、スコーンと突き抜ける「知の悦び」に勝てるものなどないのです。

スマホから手を離すのは簡単です。深呼吸をしてエイッと電源をオフにしましょう。そして温かいお風呂にゆっくり入り、その日はブルーライトの影響を受けずに熟睡しましょう。翌朝はスマホのアラームではなく時計のベルで起き、朝食の間は新聞を読むか、虚空を見つめて努めてぼんやりします。すると気付くくのです。「アタシの生活、10年前までこれが普通だったのに、えらくスマホに支配されてるもんだな~」。あなたはスマホなんかなくても普通に生きていける。スマホ何するものぞ。そんなものにあなたを支配させてはいけません。さて、家を出るときにようやくスマホをオンにしましょう。その小さな画面をあらためて見ると、チャチく見えるものです。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。