困難な方を選びながら、流れに乗っていく

【原田】世界を旅行したことで、自分自身に変化はありましたか?

【西井】これまでに120カ国くらい行ったでしょうか。世界には本当にいろんな人がいます。それを知って、昔は自分と合わない人がいるとイライラしていましたが、許せるようになりました。日本では少なくとも言葉は通じますが、海外ではまず言葉も通じないところがたくさんあります。話が通じないくらいでイライラしていても仕方がないですよね。

【西井】また、自分から動くことでチャンスが広がることを学んだことも大きいです。例えば、僕はもともとあがり症で、人前で話すのは苦手だったのです。しかし、起業して自分が経営者になれば、そういう機会は避けられません。あんまり緊張していると格好悪いので克服したいと思って、講演なども積極的に受けるようにしたのです。そうしたらだいぶ緊張しなくなりましたね。

あと、僕はまったくお酒を飲めないのですが、話を聞いてみたいと思った人は、どんどん飲みに誘います。自分から動くことで、成長する機会は作れます。

【原田】成長に対してどん欲ですね。

【西井】ただ、「10年後にこうなりたいから、今こうする」みたいなものはないのです。20歳の時に、今の自分はまったく想像できませんでしたし。仕事はものすごく緻密に戦略を立てて進めますが、自分自身については、そういったことはありません。最初の世界一周も、1年の予定が結局2年半に延びました。次にどこに行こうかという予定はまったく立てずに、目の前の流れに乗っていくのが面白い。それは旅も仕事も同じです。

なすがままで流されていくのではありません。その場その場で選択し、決断はしています。少し前にyahooの宮坂社長が入社式でお話された言葉ではあるのですが、迷ったら“Be wild”の精神で、ワイルドな方を選びます。判断は、楽な方に行きがちですが、それではつまらない結果に終わることが多いので。

僕は未知のことが好きなのです。得意なことや、できることを仕事にするより、やったことがないことや、今はできないけどこれからできるようになりたいことを、仕事にしたいと思っています。

■インタビューを終えて
西井さん、ありがとうございました。オイシックスの食品は単発購入型ではなく定期購入型で、これって企業と顧客に信頼関係がないと継続できない形です。そして今回の対談を通じて、オイシックスが顧客と築いている信頼関係が、「社員と会社」にも垣間見えました。一見破天荒なキャリア(笑)の西井さんは誠実で勤勉な方で、その信頼をもとに裁量を与え合う、健全な「社員と会社」の関係を感じました。健康的な職場だからこそ、健康的な食品が提供できるのだと思います、西井さん、これからもおいしい野菜をよろしくお願いします。(原田博植)

▼21世紀を生き抜く「新しい仕事」 連載一覧はこちら
http://woman.president.jp/category/wol00052

原田博植(はらだ・ひろうえ)
株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 アナリスト。2012年に株式会社リクルートへ入社。人材事業(リクナビNEXT・リクルートエージェント)、販促事業(じゃらん・ホットペッパー グルメ・ホットペッパービューティー)、EC事業(ポンパレモール)にてデータベース改良とアルゴリズム開発を歴任。2013年日本のデータサイエンス技術書 の草分け「データサイエンティスト養成読本」執筆。2014年業界団体「丸の内アナリティクス」を立ち上げ主宰。2015年データサイエン ティスト・オブ・ザ・イヤー受賞。早稲田大学創造理工学部招聘教授。