企画の提案、異議の申し立て……。なぜかうまくいかないのは、内容に問題があるわけじゃなかった!(アドバイスしてくれる人:マネックス証券社長兼CEO 松本 大さん)

いいんじゃないですか。僕なんか、子どものころから違うと思ったら違うって言うのが当たり前で、社会に出てからも相手が先輩だろうが上司だろうが、これ違うでしょ、こうしましょうと言ってきたんで、自分の会社でもみんなにそうしてほしいですね。

Q:自社に時代錯誤の「粘土層管理職」がいる

ゴールドマン・サックス時代は、上から7番目くらいの偉い役員の方針が、いかに会社のためにならないか、理由や根拠を分厚いレポートにまとめ、本人に直訴したこともありました。本人に伝えたうえで、さらに上の人にも話しに行きました。「何か違う」という思いに直面したら、それは会社の競争力を上げるチャンス。自分はいいことをしていると考えたほうが僕はいいと思います。

ただ、相手に「間違ってます」と言うときに意識してほしいのは、それを伝える目的は何かということです。異議申し立ても企画提案もそうですが、大切なことは自分が何を言ったかではなく、相手に「じゃあそうしよう」と言ってもらえるかです。独りよがりに「いい案なのにわかってくれないあの人はダメ」なんて思っちゃうと、それこそダメなんです。コミュニケーションの主役は相手なので。会社は仕事をする場。無理に仲良くする必要はない。でも仲良くするほうが都合がよければ仲が良いふりをしたらいい。目的をクリアにして、貪欲に行動してください。

松本 大さん「いいことしてる、自分! と自信をもっていいんです」

●根回しナシで企画を通す方法って?
僕自身の経験からすると、どれだけ自分がそれをやりたいか、どれだけ信じているかが大きい。自分が本当に、それが重要な企画だと信じていたら、説明しますよね、相手に。1回でだめだったら、違うやり方でやってみようとか。そうしているうちに、伝わりますよ。

●「粘土層管理職」に意見を通すには
自分の考えを世代や価値観の違う相手に伝えるのって大変で、何としてもわかってもらおうと情熱と覚悟をもって臨んでも伝わる確率は50%。「ダメもと」とか思って臨んだら、せいぜい伝わる確率は5%だと思います。最初からあきらめないで。

松本 大(まつもと・おおき)
マネックス証券社長兼CEO。1963年、埼玉県生まれ。東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券、ゴールドマン・サックス証券勤務を経て、99年マネックス証券を設立。著書に『私の仕事術』『「お金の流れ」はこう変わった!』など。

構成=やまよし子 撮影=的野弘路 アンケート調査=NTTコム オンライン