海外市場は真剣に狙っているが、会社を大きくしたいとか、上場したい、大きくもうけたいといった野望はなさそうだ。

「今いる人たちが幸せに、やりがいをもって働いてくれることが一番大事です。自然に増えていくのはいいけれど、それでも社員は20人以上にならないようにしたいなと思っています。派手に大きくしてダメになった人たちをたくさん見ていますから。うちはITじゃなくて製造業ですしね」

別に上場して大金持ちになりたいという野望があるわけでもないし、と笑う。

デザイナーズユニット「TENT」とコラボして開発しているブランド「NuAns」では、生活に溶け込む暖かみのあるiPhone用アクセサリーを展開している。

封印していたギターを弾こうかな

星川さんは高校時代、バンド活動をしていた。ギターを弾いて歌をうたっていたそうだ。

「就職しないで音楽でやっていく、バンドを続ける、という友達もいました。でも僕は働かないで生きていくことはできないな、と。人生を賭けるほどじゃなかった、ということなのだと思います。それでも、どこかで『音楽に関わる仕事をしたい!』という気持ちはあった。だから最初は、音響に関わる会社に就職したんじゃないかな」

トリニティでiPhone用アクセサリを作り始めたとき、星川さんはギター型のiPhone用スピーカーを考案している。

「『Fingerist(フィンガリスト)』っていうんですけどね。でも、この会社を始めるときに、ギターは封印したんです。10年は弾かないぞ、って」

Fingeristは、iPhoneやiPod touchにインストールした楽器アプリを、ギタリストのように弾くことができるミュージックアダプター。ラインアウトでギターアンプにつないで、ライブ演奏を行うこともできる。

その10年が終わろうとしている。

「そうなんですよ。今年はCD作ろうかな、と思っています」